「安倍さんはひどかったが、岸田さんはもっとひどい」支持率急落の岸田政権が“安倍氏以上に安倍的”といわれる理由
故・安倍首相が続けた強権政治を「軽武装・経済重視」のソフト路線に転換してくれるのではないかとの期待を受けて誕生した岸田政権だが、政権誕生から2年が経ってもそのカラーははっきりせず、「安倍氏以上に安倍的」との声も聞こえてくる。「日刊ゲンダイ」第一編集局長が政権との戦いを綴った『安倍晋三vs日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争』より一部を抜粋、編集してお届けする。
安倍晋三vs日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争 #2
「日本の社会の中で一番権限が大きい人なので(総理大臣を)目指した」
「安倍さんはひどかったが、岸田さんはもっとひどい」
取材をすると幾人もの識者からこんな言葉が出てくる。その感覚に半分納得する一方で違和感も覚えた。ならば安倍氏はマシだったのか。選挙演説中の銃撃という非業の死を遂げたこともあり、安倍氏の行ってきた政治に対しての評価がオブラートに包まれてしまいそうな気がした。
例えば、大平正芳や宮沢喜一らの時代を知る年配の人になればなるほど、岸田氏がハト派の宏池会であることにかすかな希望を見ていた。安倍氏の強権路線を「軽武装 経済重視」のソフト路線に転換してくれるのではないかと期待していた。だが、財源も中身も不透明なまま、米国に促されるように防衛費倍増を決めるなどの裏切りに、「岸田さんはもっとひどい」に変わったという。

岸田文雄首相(本人Facebookより)
確かに岸田氏は、総理大臣として何をやりたいのか、2年経過してもよくわからない。かつて、「総理になったら最もやりたいこと」を問われ「人事」と答えた。総理になってからも、「どうして総理になろうと思ったのか」と尋ねた子どもに、「日本の社会の中で一番権限が大きい人なので目指した」と答えている。「国家観がない」「総理大臣がゴール」と言われる所以だ。
岸田氏本人は「俺は安倍さんもやれなかったことをやったんだ」と自負していると報じられた。安倍氏の元側近は「岸田さんは安倍さんの〝やり残し〟を自分の手柄にしている」とこぼす。
本書で書いてきたように、日本の政治も経済も社会もダメにした元凶はやはり安倍氏だ。岸田氏はその延長線上にいるに過ぎない。しかし岸田氏は、安倍路線を確固たる信念を持って踏襲しているわけではないから、何事にも躊躇がない。逡巡がない。目の前の課題を淡々とこなす優等生の姿にも見える。だから怖い。
やっていることは「ミニ安倍政治」。現実に起きていることは「安倍政治の巨大化」。路線を敷いた安倍氏とそれを形にする岸田氏と、どちらがひどいのだろうか―。
「岸田首相が安倍氏以上に安倍的な政治を行っている」
安倍氏が亡くなって1年余。本人は不在なのに、もの言えば唇寒しの風潮や社会の分断は続き、「新しい戦前」への準備が進む。今も安倍政権時代が続いているかのようだ。
日刊ゲンダイの記事(2023年7月4日発行)で元経産官僚の古賀茂明氏がこう話していた。
「安倍氏はもういない。安倍派にも実力のある議員がいるわけでもない。それなのに、得体の知れない『安倍的なもの』が、ウイルスのように人々に伝染し続けている。安倍氏亡き後、このウイルスも勢いを失うかと思ったが、実際には安倍派的な政治家ではないと思われていた岸田首相が安倍氏以上に安倍的な政治を行っている。
一部の右翼だけでなく、世論も、例えば岸田政権が原発活用に転じたことについて『電気が足りないから仕方ない』、防衛費を増やすことも『安全保障環境を考えたら仕方ない』という空気になってきた。安倍氏が死去して1年。ウイルスの増殖は気づかぬうちにむしろ勢いを増し強くなっている」

古賀茂明氏
安倍的なものが日本の政治や永田町にしっかり根を張り、朝令暮改で自分のない岸田氏によって、新型コロナウイルスのように自由自在に変異しながら増殖しているのが現状だ。知らず知らずのうちに罹患してしまわぬよう、ウイルスに抗い、世間にも大声でしつこく呼びかけていく。そんな地道な仕事を変わらず続けていきたい。
小さな光は地方議会で女性議員が増えたことだ。静かに地殻変動が起きている。これが国会へと広がっていくには、まだ時間がかかるかもしれないが、その時は間違いなく政治の景色が変わる。安倍的なウイルスを死滅させる原動力にもなっていくのではないか。
文/小塚かおる
安倍晋三 VS. 日刊ゲンダイ 「強権政治」との10年戦争 (朝日新書)
小塚 かおる (著)

2023/10/13
¥979
288ページ
978-4022952318
安倍首相――「帰りに『日刊ゲンダイ』でも読んでみてくださいよ。これが委縮している姿ですか」(国会答弁から)
「日刊ゲンダイ」の辞書に
忖度と遠慮という言葉はない。
安倍政権の「やりたい放題」は許さない!
「ゲンダイ」の第一編集局長が
「強敵」との戦いのすべてを公開。
厳正な「歴史法廷」で首相の大罪を追及・総括する!
日本経済を世界の三流にした元凶、アベノミクス。
戦争を近寄せた「安保法制」「解釈改憲」。
噓だらけの「モリ・カケ・桜」――。
5つの大罪と、大マスコミの責任を問う!
〈目次から〉
第1章 失敗したアベノミクス――世界から取り残された日本
第2章 戦争を「身近なもの」にした大罪-—こうして日本は軍事大国へ
第3章 破壊された民主主義の根幹-—権力私物化の果てに
第4章 社会「分断」の暴挙-—高齢者を切り捨て、女性を軽んじる
第5章 失われた自民党の矜持-—終わりの始まり
第6章 メディアを壊したのは誰か――これでいいのか大マスコミ
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