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教養・カルチャー 2022.05.15

『カモン カモン』に込められた「切実な願い」を読み取る

トーマス・エジソンが「個人のための映像視聴装置」であるキネトスコープを発明してから130年余り。NetflixやAmazonがもたらした構造変化、テレビシリーズを質と量ともにリードし続けるHBO、覇権を握るディズニーのディズニープラスへの業態移行。長引く新型コロナウイルスの影響によって「劇場での鑑賞」から「自宅での個人視聴」の動きがさらに加速する中、その誕生以来最大の転換期を迎えた「映画」というアートフォーム。その最前線を、映画ジャーナリスト宇野維正が「新作の映画批評」を通してリアルタイムで詳らかにしていく連載「130年目の映画革命」。第5回は、『人生はビギナーズ』(2010年)や『20センチュリー・ウーマン』(2016年)などこれまでもパーソナルな題材をもとに秀作を作り続けてきたマイク・ミルズ監督の新作『カモン カモン』。『ジョーカー』(2019年)でアカデミー主演男優賞を受賞したホアキン・フェニックスが、その次作として選んだ作品としても注目されている本作。そこに込められた作り手たちのメッセージとは?

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130年目の映画革命 第5回

『カモン カモン』に込められた「切実な願い」を読み取る_1

「この時代に、自分のようなストレートの裕福な白人の中年男性が主人公の映画を撮っても、誰からも相手にされないからね」。2017年に日本公開された『20センチュリー・ウーマン』のタイミングでおこなったインタビューで、マイク・ミルズはそう語った。同作が北米で公開されたのは2016年12月。製作時期としてはちょうどブラックス・ライブズ・マターのムーブメントが最初のピークを迎えていた頃で、まだ#MeTooのムーブメントは本格化する前だったが、ミルズは時代の大きな変化を敏感に、そして正確に感じ取っていた。日本人のジャーナリストが相手ということでガードが緩んでいたのかもしれないが、ため息混じりで発せられたそのミもフタもない実感のこもった言葉の重みを、自分は今でも忘れることができない。

 確かに、スーパーヒーロー映画やアクション映画は別として(いや、もはやそれらさえ別ではないが)、近年、映画の中では白人男性が中心的な存在として描かれることが減っている。特にミルズが属しているようなアートハウス系映画の世界では、半自伝的、私小説的、自己言及的な作品が長年大きな幅を利かせてきたわけで、それは映画作家の存在意義に直結するような事態なのだろう。ポリティカル・コレクトネスが進行し、作品の内外でそれまでの人種やジェンダーのバイアスが是正されていく中で(もちろんそれ自体は「正しい」ことだ)、映画界においてこれまで主流を占めてきた「ストレートの白人中年男性」は、自身のアイデンティティを見つめ直す必要に迫られている。

 ミルズは一貫して半自伝的な作品を撮り続けてきた作家だ。長編デビュー作『サムサッカー』はウォルター・キルンの原作に自身の幼少期の経験を折り込んだ作品、『人生はビギナーズ』は母親に先立たれた後にゲイであることをカミングアウトした父親と自分の関係についての作品、『20センチュリー・ウーマン』はティーンの頃に自分を「育てて」くれた母親、姉、ガールフレンドをはじめとする女性たちを描いた作品だった。つまり、「パーソナルな作品」を作り続けながらも、巧妙に「ストレートの白人中年男性」としての自分自身に焦点を当てることは避けてきたわけだ。

 ラジオでフリーランスのジャーナリストをしている『カモン カモン』の主人公ジョニーは、40代の白人中年男性。本作で描かれた甥との共同生活には、ミルズが子育てをしてきた過程で体験したことが随所に反映されているという。つまり、5年前に「ストレートの裕福な白人の中年男性が主人公の映画を撮っても、誰からも相手にされない」と語っていたミルズは、本作で初めて「ストレートの白人中年男性」を作品の中心に据えたのだ。

『カモン カモン』に込められた「切実な願い」を読み取る_2

 ミルズが意を決してこれまで避けてきた領域へと踏み込み、フェニックスが政治的な「間違い」ばかりを侵す作品でもあった『ジョーカー』のリハビリとして選んだ『カモン カモン』は、2020年代において「ストレートの白人中年男性」を主人公にした映画として、いかに「未来」や「希望」を描くかという試みだ。そこでミルズは、主人公を「アメリカの各都市を移動しながらそこで生活する子供たちにインタビューする」という、それでどうやって生計を立てているのかわからないような不思議な仕事に就かせた。本作に収録されているインタビューはどれもリアルなものだが、その前提となっている設定そのものがファンタジーとなっているわけだ。ちなみに、劇中でインタビューを受けた子供の中には「あ、ジョーカーの人だ!」とジョニーを演じるホアキンに反応した子供もいたとのことだが、もちろんそのようなシーンは本編では採用されていない。

 『ジョーカー』の主人公アーサーは典型的な「コミュ障」だった。実は自分の話を聞かせることよりも観客とのコミュニケーションこそが肝となるスタンドアップ・コメディアンを志しながらも、アーサーは職場の同僚とも母親とも想いを寄せる異性とも、ほとんどまともにコミュニケーションをとることができず、自分勝手な妄想を膨らませ、その必然的な帰結として凶行に走った。対して、『カモン カモン』の主人公ジョニーは人の話を聞くことそのものを職業としていて、そこで相手を尊重しながらじっくり対話をして、それを録音してラジオの電波を通して発信していく。対話の冒頭、彼は子供たちにこう告げる。「これから君にいくつか質問する。正しい答えも間違った答えもない」。

 2017年にハリウッドで#MeTooのムーブメントが起こって以降、キャンセルされるべき何人かの大物プロデューサーや大物俳優(そのほぼ全員が白人男性だ)が映画業界を追われ、映画やドラマシリーズの制作現場ではリスペクト・トレーニングやインクルージョン・ライダーといったハラスメント対策や多様性担保のための新しい制度や試みが導入され、女性や人種的マイノリティや性的マイノリティを主人公とする作品の比率は増えた。その一方で、「キャンセルされるべき人物」の後押しによってキャリアの足場を築いた者たちや、(家族を含む)その周囲にいた者たちの間には、ちょっとした失言や軽口さえも許されない空気が張り詰め、そこで迂闊に口を滑らせた人々は数年にわたって様々な局面でライトなキャンセル状態に追い込まれるようになった。それは、まさにミルズやフェニックスの周囲でも起こっていたことである。

 「これから君にいくつか質問をする。正しい答えも間違った答えもない」。その言葉をそのまま素直に受け止めて、本当に自分の思っていることを話すことができるのは、現代社会においてはもはや子供たちだけの特権かもしれない。いや、ローティーンの頃にネットにアップした動画が数年後に炎上して謝罪に追い込まれるようなポップスターを見ながら育った彼ら彼女らの中には、大人たちのように口をつぐむことを覚えた子供もたくさんいることだろう。『カモン カモン』のエンドロールに入る直前、画面が音声とクレジットだけに切り替わった後に「スーパーヒーローのようなパワーがあったらどんな力で何をしたい?」と質問された女の子は次のように答える。「多分、その力は使わないと思う。自分自身でいることがパワーだから」。

 人々が「正しい」か「間違っている」かばかりを気にするようになって、リアルワールドが奇妙な静けさに包まれるようになったこの世界。その反動で、ネットではますます攻撃的な言葉が吹き荒れているこの世界。まるでボトルに入れたメッセージを荒涼とした海原に放つように、『カモン カモン』はそんな世界の「未来」に向けて、誰もが自分自身の言葉で分かりあえない他者とも対話のできる日がやってくることを切実に願った作品だ。

『カモン カモン』に込められた「切実な願い」を読み取る_3

『カモン カモン』4月22日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー  配給:ハピネットファントム・スタジオ
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宇野維正

うの これまさ

1970年、東京都生まれ。映画・音楽ジャーナリスト。音楽誌、映画誌、サッカー誌の編集部を経て、2008年に独立。著書に『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(共著:くるり、新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(共著:レジ―、ソルメディア)、『2010’s』(共著:田中宗一郎、新潮社)。

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