#2はこちら
#3はこちら

プーチンが世界にふっかけたフェイクニュース

フェイクニュースとは、デマや一方的すぎる情報を指すが、これがメディアを通じて広がり、「陰謀論」や政治的なプロパガンダなどと結びついて人々の生活や国の安全保障をも脅かす存在になっている。「ニュース」というだけに報道のような形で広がっていく。

紙の時代での情報の伝播には自ずと限界があった。紙の印刷物を届けられる範囲でしか、情報が拡散しなかったからだ。しかし、オンラインは違う。人類の数ほどに達したスマホやPCを通して、SNSが中心になって効率よく瞬時に情報が伝播していく。それが事実かフェイクなのかが見極められないケースも多い。そして、そんな特性を利用する権力者たちもいる。

その最たる例が、ロシアのウラジミール・プーチン大統領がウクライナ東部でウクライナ政府軍による「ジェノサイド(集団殺害)」が起きていると主張したことだろう。

ロシアのタス通信はロシアがウクライナへ侵攻する前の2022年2月21日、ロシア領内に侵入したウクライナ軍車両をロシア軍が破壊したと伝えた。しかし、イギリスの調査報道機関ベリングキャットはSNSで拡散した映像に映っているウクライナ軍のものと指摘された車両を装甲兵員輸送車「BTR70M」であると分析した。ウクライナ軍は「BTR70M」を運用していない。

「馬鹿が俺らの嘘を本気にしている」…フェイクニュース製造村に潜入! 極貧地域、クラスの4割が毎日5本執筆の実態_1
すべての画像を見る

ロシアが流す反ワクデマ…国内向けには「ワクチンは効く」

「ジェノサイド」や「ウクライナ軍によるロシア領内への侵入・攻撃」というフェイクニュースが、今回の侵攻の口実に使われていたのだ。ウクライナでもフェイクと思しきニュースが流れており、両国によるフェイクニュースの情報戦が盛んだ。

本書の冒頭でも述べたが、ロシアは、西側諸国に「新型コロナウイルスのワクチンは効かない」というフェイクニュースを流し、逆に、ロシア国内では「ワクチンは効く」というニュースを流している。

フェイクニュース自体は、昔から「デマ」「虚言」など表現は違っていたかもしれないが、存在していた。ただ、私たちも世間話の中で、相手の話が信頼性の足らないものだと感じた時には「それは、フェイクニュースではないの?」と問う場面が増えてきたように感じる。

これほどまでに「フェイクニュース」という言葉が私たちの日常に広まったのは、米国のドナルド・トランプ前大統領のおかげともいえる。トランプ氏が大統領に就任する前後は、米国の世論に主要メディアが偏向的な報道を流しているとの不満が高まっていた。トランプ氏は主要メディアに対して、ツイッターを使って「フェイクニュースだ!」と攻撃を続け、喝采を浴びた。