日本の「政教分離」はどこへいく? 創価学会と公明党は宗教2世・長井秀和さんの市議トップ当選を真摯に受け止めるべきである
2022年日本最大の事件、「安倍晋三銃撃事件」を発端に明るみになり始めた政治と宗教のタブー。外国人目線で言いたいことを言いいながら、日本のニュースをわかりやすく教えてくれるタレントのフィフィ氏が『まだ本当のことを言わないの? 日本の9大タブー』(幻冬舎)では、「宗教2世問題は統一教会だけではない」と指摘する。
フィフィが考える日本の9大タブー#3
「宗教団体」として議論するから前に進まない
旧統一教会の日本での活動を許し、被害を増大させたのは、日本の政治家たちです。彼らの罪は、あまりにも重い。
もし当事者たちが責任を感じているのなら、これまで旧統一教会とどのような関係を持っていたのか正直に表に出し、これからどうしていくのか、しっかりと考えていかなくてはなりません。そして、スピーディに事を運んでいくべきなのですが、政府のやっていることは、いちいち遅すぎます。見ていてイライラしてきます。
対策がスピーディに運ばないのは、旧統一教会を「宗教団体」という位置づけで議論しているからでしょう。

東京都渋谷区にある世界平和統一家庭連合(旧統一教会)本部
教会の教義の中には、「日本は戦時中、朝鮮に悪いことをした、それを浄化するために、日 本は高額の献金をしなければいけない。それをしないなら不幸になる」といったものがありま す。こうした手口でお金を集めるなんて、宗教でも何でもなくて脅迫そのものではないですか。また、買えば幸せになれるなどと言って高額な壺を売りつける。こうした団体のことを「宗 教」のくくりで議論しているのが間違い。旧統一教会のやっていることは宗教ではなく、反社 会的な活動で、立派な犯罪です。
こうした集団を「宗教団体」の位置づけにするから、「信仰の自由」云々という議論が出てきて前に進まなくなるんです。それに、こんな悪徳集団を「宗教団体」とすると、宗教全体のイメージが下がります。騙されて高額の献金を搾取され続けてきた被害者も救われません。
とにかく、旧統一教会を日本で活動させないためにも、それこそ、今すぐにでも解散請求を 出すべきです。ですが、見ていると、どうも、のらりくらりとした印象を受けてしまうのは、私だけなのでしょうか。旧統一教会は、日本の国家安全保障を脅かすまでの存在なのですから、防衛費の増額の議論だけではなくて、教団の解散に向けても、政府は積極的に動かなくてはなりません。
公明党の「ノーコメント」は残念すぎる
自民党議員と旧統一教会の関係が取り沙汰される中、岸田首相は、「党と旧統一教会の関係を断つ」と記者会見で明言しました。
当たり前です。旧統一教会がトラブルだらけの団体だから、ということもありますが、たと えトラブルがなかったとしても、宗教団体とは縁を切らなくてはならないのではありませんか。前にも触れましたが、日本国憲法には、「政教分離」の原則があります。今の日本の状況を
見ると、完全にその原則が無視されているように感じられてしまいます。日本で「政教分離」の話題になるたびに指摘されるのが、公明党ですよね。この党が創価学会という宗教団体を母体とすることは、周知の事実です。
1950年代、創価学会は政界進出を目的として「文化部」を創設、そこから議員を輩出す
るようになります。その後、「政治局」「公明政治連盟」へと改組し、1964年、創価学会から「公明政治連盟」が切り離され、公明党が誕生しました。
特定の宗教団体に属している人が政治家になる分には、信仰の自由というものがありますから、何の問題もありません。宗教団体の信者が個人的に政党を応援したり、その党に投票したりするのも、同様です。
でも逆に、憲法に定められた「政教分離」の原則によると、政治家が宗教団体に応援を呼びかけることは禁止されています。また、宗教団体も、組織的に信者たちに対して選挙の応援を求めてもいけないことになっています。
公明党や創価学会では、これがきちんと守られているのでしょうか。
安倍元総理の銃撃事件を受けて、公明党の山口那津男代表が囲み取材を受けた際、記者が政治と宗教について、「どう考えているか」と質問しました。しかし、山口代表の回答は、「ノーコメント」。がっかりしてしまいました。

公明党の山口那津男代表
日本の「政治と宗教」の代名詞のような存在が公明党。自分たちのスタンスと創価学会の関係性を踏まえたうえで、政治と宗教についてコメントしてくれると期待したのに、「ノーコメント」なんて、残念すぎます。
「宗教2世問題」は旧統一教会だけではない
公明党が創価学会と深く結びついていることは、誰でも知っています。政治と宗教の関係性について、これほどまでに議論がなされている今、自分たちの立場について明言すべきときではないでしょうか。
公明党の公式サイトには、創価学会との関係を「政教一致」と非難する意見に対して、「全く的外れな批判」と明記されています。憲法に定められている「政教分離」の原則について、「憲法が規制対象としているのは、『国家権力』の側です。つまり、創価学会という支持団体(宗教法人)が公明党という政党を支援することは、なんら憲法違反になりません」との見解を示しているのです。
これ、間違った憲法解釈です。宗教団体として組織的に選挙応援をするのは、アウトです。この主張は、憲法解釈をねじ曲げて「問題ない」と言っているだけ。
おかしいですよね。この問題にメスが入れられないから、旧統一教会というカルト集団が政治に関わることも野放しにされてきたのです。
安倍元首相の銃撃事件の犯人は、母親が旧統一教会の熱心な信者で、そのため、不遇な幼少期を送っていたことが報道されました。これを機に「宗教2世」がクローズアップされるようになり、世の中には、たくさんの宗教2世が存在し、多くが苦しい生活を送っていることが明らかになりました。
旧統一教会の宗教2世の小川さゆりさんは、幼少期に苦しい思いをしたことを、メディアに顔を出して涙ながらに何度も訴えていましたが、宗教2世の問題は、何も旧統一教会に限ったことではありません。
創価学会でも、2世が苦しんできたと訴えている人がいます。お笑い芸人の長井秀和さんです。
公明党の存在が「政教分離」できなくさせている

お笑い芸人の長井秀和さん
前出の小川さんや、この長井さんのように、顔を出して大きな宗教団体の内部事情を暴露するのは簡単ではありません。非常に危険な行為でもあります。でも、だからこそ、こうした勇気ある姿に多くの人が注目したのではないでしょうか。
ちなみに、2022年12月下旬、政府は、宗教2世への信仰の強制を児童虐待とすることを発表しましたが、これは、宗教2世たちの勇気ある行動があったからこそなんですね。
日本には宗教的に虐待されている子どもを保護者から引き離して、行政の判断で保護することが難しいという現実がありました。宗教2世の虐待問題をめぐっては児相に相談しても、「宗教問題には介入できない」と言われたという相談も寄せられていました。これまでは、信仰の自由を理由に、行政は消極的な判断をしてきたのです。親の信仰や教育に口を出せないということだったのでしょう。
しかし、今回発表された指針には、「必要な場合には躊躇なく、その児童を一時保護するように」と書かれています。これは、日本においては大きな一歩ですが、それもこれも、宗教2世たちの訴えが届いた結果と言えるでしょう。
創価学会と公明党は宗教2世の市議トップ当選を真摯に受け止めよ
2022年12月25日、長井秀和さんは、東京都西東京市議選に無所属で出馬して当選しました。西東京市の選挙のために1年半前から毎日街頭に立って演説をしてきましたが、地域の活性化はもちろん、カルト宗教問題などを訴えてきました。
その甲斐あって、なんと立候補者 人中トップで当選。有名人で注目されたから当選したわけではありません。今回の市議選ではプロレスラーや芸人、歌手など他に4人もの有名人が出馬していましたが、どの人も当選していません。
長井さんは、もうずいぶん前に創価学会を脱会、宗教2世としてどれだけ苦しい思いをしながら過ごしてきたかを積極的に発信してきました。今回の西東京市の地方選でも、カルトと戦う議員になりたい、宗教2世で行き場がなくなった人を受け入れるような団体を発足していきたい、といった決意で立候補したそうですが、そうした決意や訴えが、人々に受け入れられたからこそ、トップ当選したわけです。
それは、とても大きな意味を持っています。長井さんの当選は、まだ小さな一歩かもしれませんが、このことを何より恐れているのは、創価学会と公明党でしょう。この小さな渦が今後大きな渦になる可能性があるのですから。創価学会と公明党は自分たちが世間からどう見られているのか、この結果を真摯に受け止めるべきなのです。
『まだ本当のことを言わないの? 日本の9大タブー』(幻冬舎)
フィフィ

2023/5/10
1760円(税込)
288ページ
978-4-344-04109-7
外国人目線だからこそわかる日本の深い闇。
国家安全保障、政教分離、ジェンダー問題など、日本人が知らない実態を赤裸々に告発!
どうにかしないと、ほんと日本はやばいですよ!!
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