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上映会直前には脅迫電話も

3月に公開された安倍元総理をテーマにしたドキュメンタリー「妖怪の孫」。“安倍政治の本質”を徹底検証する内容から、いまだ上映を躊躇する劇場も少なくないが、そんな中、4月中旬に安倍元首相の選挙区のど真ん中、下関市(山口四区)で全国初の自主上映会が行われた。

時期は、まさに衆院補選のまっただ中。こんな時期に利権渦巻く安倍元首相の本拠地で上映会を開いて本当に大丈夫なのか? 案の定、上映会直前に主催者チームには怖い電凸が来ていたようで……

「これ見て。電話が来たわよ。」

数日前、主催者問い合わせに来た電凸のメモを、受付にいた主催者チームの田辺さんが見せてくれた。震える手で書いたために読みにくいが、
「映画(について) 男(からの電話)。 お前、下関でこんな映画上映していいんか? 恥ずかしくないんか? お前人間やないのー」とある。

〈衆院山口4区〉70年続いた「岸・安部王国」でまさかの映画「妖怪の孫」上映!内山監督が見た「妖怪の選挙区のリアル」_1
生々しい脅迫電話のメモ
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相手は50~60代の男性。かなりの脅し口調だったようで、田辺さんはホール横の下関警察署に飛び込み、実情を伝えたのだが、他にもホールや映画センターへ苦情電話が数件あったという。やはりここは安倍元首相の本拠地なのだ。

しばらくして開場開始。やっと来たお客様も、一人二人程度で「まぁこんなものか…」と感じ始めた上演30分前。寸断なく人の波が訪れ、受付が追いつかなくなり、みるみる内に長蛇の列になっていった。

助監と二人で、建物外に怪しげな輩がいないかカメラ持参で巡回したが、幸い何もなく、その後は客席誘導員に徹した。

気づけば上映開始の時間。始まっても駆け込みのお客様が次々と表れ、ついに完全な満席。驚きの事態にスタッフ一同、「最高のスタートだね」と手に手をとって喜んだ。遅れて来るお客様がまだまだ続いたので、諦めて明日来てもらう案内を掲げた。

〈衆院山口4区〉70年続いた「岸・安部王国」でまさかの映画「妖怪の孫」上映!内山監督が見た「妖怪の選挙区のリアル」_2
この写真をはりつけてツイッターで呟いたら、コメント欄がバシバシ動いた。人生で初めて「バズる」という体験をした