――『それってパクリじゃないですか?』(以下、『それパク』)の誕生秘話を教えてください。

連続ドラマ化決定の話題作『それってパクリじゃないですか?』は「知財」のお仕事がよく分かる、極上のエンターテインメント小説_1
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奥乃桜子(以下同)以前、大学で理系の研究者をしていたのですが、そのころ周囲にはメーカーで開発に従事する友人知人や、特許庁に入庁した同級生、特許事務所に就職するラボの先輩などがおり、今思えば知財との関わりがそこそこある環境だったと思います。ですが当時は知財のエッセンスみたいなものはなにもわかっておらず、小説の題材としても意識はしませんでした。

――そこから執筆に至る、何かきっかけはありましたか?

その後小説家として、メーカーで知財戦略業務に携わっている知人から生きた実務を聞く機会があり、粛々と権利化するだけという今までのイメージとはまったく違う、スポーツやゲームの戦略に通じる丁々発止の駆け引きを知って、とても面白いと思いました。

そしてこの企業同士の、正義もなければ悪もない、ビジネスとしての駆け引きをリアルに描けばおもしろいものになるのではと取材をはじめました。

もうひとつの軸として、小説家として創作界隈の話題に触れていると、盗作とパロディ、オマージュの違いや、商標のトラブルなどで、専門家と世間の認識に大きなギャップがあるのに気がつきました。また世間の人々が、シチュエーションによってパクリに厳しかったり寛容だったり、評価基準を大きくぶれさせるのも気になりました。そのあたりをうまくすくいあげられれば、いろんな人に感情移入してもらえる作品になるのではと考えました。

――印象的なタイトルは、どんな風に決められたのですか。

『パクリ』は一見ぎょっとする単語なのですが、知的財産に関しては、誰もがパクリかもという事例に身近に出会ったり、もしかしたら身に覚えがあったりするんじゃないかと思います。そういうみなさんに『それってパクリじゃないですか?』と問いかけるような、はっとする題名として考えました。

ちなみにパクリかどうかの判断は意外に難しく、素人が安易にパクリと決めつけ糾弾する危険性についても小説では扱っているので、読んでみていただけると嬉しいです。