今回、紹介するのはマンガMeeで連載中の『大キライとプロポーズ〜入れ替わった婚約者がガチクズだった件〜』(東ねね)。人を好きになることで臆病になったり、自分の本心から目を背けてしまいそうになったりする時にこそ、読んでほしい作品だ。
マンガの名言から学ぶ恋愛処方箋『大キライとプロポーズ〜入れ替わった婚約者がガチクズだった件』
ドラマ、映画、音楽、アニメ、マンガ…さまざまなエンタメコンテンツは、私たちに楽しさだけでなく、多くの学びを与えてくれる。今回はマンガに焦点を当て、作中に登場する心に響く名言をいくつかピックアップ。そこから学ぶべき恋愛術について紹介していきたい。
マンガの名言から学ぶ恋愛処方箋

©東ねね・集英社マンガMee
「大キライとプロポーズ〜入れ替わった婚約者がガチクズだった件〜」はこんなストーリー
本作は施設で育ち、15歳から建設現場で働く主人公・ひかりが建設会社の御曹司・蓮嗣(れんじ)に見初められ、プロポーズを受けるところからスタート。しかし、迎えた初夜で蓮嗣と身体が入れ替わってしまう。さらに、身体が入れ替わったことでひかりは、婚約者・蓮嗣が過度なパワハラをし、複数人と浮気をする“ガチクズ”な一面を知ることに。これまでの自分に対する振る舞いとは全く別人のような姿にショックを受けるひかりと、悪びれもせずに開き直る蓮嗣。“別れるため”に元の姿に戻ろうと奮闘する2人だったが、傷付けられてもなお真っ直ぐに向き合うひかりの姿が、徐々に蓮嗣を変えていくという波乱万丈ストーリーだ。
マンガの恋愛処方箋①:「大好きだった気持ちだけは否定しないことにした」

裏切られた事実を知った上でひかりが蓮嗣に「大好きだった気持ちだけは否定しないことにした」と告げるこのシーン。
失恋した時、裏切られた時、「冷静に考えたら、そこまで好きじゃなかった」「もう好きじゃない」と言い聞かせたり、「好きになった自分が馬鹿だった」と過去の自分すら否定してしまった経験はないだろうか。
しかし、ひかりはこのシーンのみならず作中で一度も「蓮嗣のことを好きにならなければ良かった」と後悔したり、彼を好きだと思う自分の気持ちを否定することをしない。むしろ、裏切られた相手に対しても「好きだった」と、過去の感情は嘘偽りのないものだと何度も伝えている。
名言から学ぶこと▶︎自分の感情と過ごした時間は嘘ではない
ここから学びたいのは、好きだった事実や過ごしてきた時間まで、否定しないで欲しいということだ。
好きだった気持ちや過去を否定することは、過去の自分自身も否定することになる。
そしてその自分自身への否定は、これから先の恋愛にも尾を引いて「また裏切られてしまうのではないか」「人を好きになるのが怖い」と呪いのようになってしまうだろう。
裏切られた事実があったとしても、これまでの言葉が嘘だったとしても、自分が相手に惹かれた気持ちや過ごした時間の幸せは決して嘘ではない。
相手と過ごした時間で得た幸福は、紛れもない事実であり、その瞬間の自分は、今の自分が悲しかろうが、辛かろうが、幸せに生きていたのだ。
そんな過去を全て否定する必要も、これから先の未来に怯える必要もない。
マンガの恋愛処方箋②:「あなたが今抱えている不安は、あなたの頭の中でしか起こっていないの」

ひかりに片思いする職場の同僚・シバケンに、職場の事務員さんが伝えた「あなたが今抱えている不安は、あなたの頭の中でしか起こっていないの」という言葉。
人を好きになると幸せを感じるのと同じくらい、不安になることも増える。不安に思うループに入ってしまうと、相手の言動から起きてもいないことまで憶測で考えてしまうのも事実だ。
例えば相手からの連絡が減ったり、いつもより素っ気なかったりした時に「もう好きじゃないのかな」「私のこと嫌いになった?」と悪い方向に物事を想像してしまった経験はないだろうか?
そしてその不安から生まれた想像を現実と錯覚してしまったとき、私たちは思うように身動きが取れなくなってしまう。
名言から学ぶこと▶︎起こってもいない事実で未来を崩すな
しかし、この名言から学べるように、不安は所詮自分の憶測が作った頭の中でしか起こらない。
不安は実際に的中することもあるが、全く見当違いな場合もある。もし後者だった場合、起こってもいない事実で自ら幸せな未来まで崩してしまったら、それほど悲しいことはない。
この言葉には「案外動いてみたら、幸せな方に道が開けるかもしれないわよ?」というアドバイスが続く。
自分1人の憶測で起こってもいない現実に怯えて幸せな未来を崩すよりも、しっかりと相手と2人で向き合うことや、実際に動くことが大切だと教えてくれる名言だ。
マンガの恋愛処方箋③:「傷付けられても騙されてもいいと思えるほど、愛せる人に出会えた人生というのは、お金より何よりかけがえがないんだよ」

蓮嗣が父に対し、母に裏切られたらどうするのかと聞かれた際、蓮嗣の父は「傷付けられても騙されてもいいと思えるほど、愛せる人に出会えた人生というのは、お金より何よりかけがえがないんだよ」と返す。
愛情の深さを感じられるこの言葉は、どんなことがあっても、好きになった気持ちを否定しない姿勢に通ずる部分がある。
しかしこれは、自分が裏切られても許し、好きで居続けるということではない。
名言から学ぶこと▶︎それでもいいと思えるくらい愛し愛される人を選ぶ
この言葉から学べることは、例えこれから先、傷付けられても騙されても許せるくらいに自分が愛せる相手、同じくらい自分を愛してくれる人を選ぶことが大切だということ。そして自分が愛した感情や時間、相手からもらったものも否定しないということだ。
その覚悟ができるくらいの相手はそう簡単にはいない。だからこそ、それほど愛せる人に出会えたことは、何よりもかけがえがないものになる。
蓮嗣の父と母が結婚したのには、それほどの覚悟があったからだろう。
マンガの恋愛処方箋④:「俺の大事を勝手に決めんじゃねぇよ」

蓮嗣の幸せを願って身を引いたひかりに対し、蓮嗣は「俺の大事を勝手に決めんじゃねぇよ」と強く言い放つ。
ここでは、この言葉自体というよりは、この言葉に込められた意味を伝えたい。
マンガやドラマ、時に現実でも“相手のためを思って身を引く”というような行動は、正直少なくないように思う。しかし、一見相手を思ったようなその優しさは、時に身勝手で自分本意な行動となることも念頭においてほしいと思う。
名言から学ぶこと▶︎人の幸せを決める権利はどこにもない
自分の幸せより、相手の幸せを願うほど人を好きになれたことは素敵なことだ。
しかし相手の幸せは相手が決めるべきことであり、「相手はきっとこの方が幸せだ」と他人が判断すべきではないということは心に刻んでおきたい。
一緒にいない方が幸せなことが、時にはあるだろう。しかし、それは相手ときちんと向き合って決めること。
人の幸せを決める権利はどこにもないのだ。
恋愛は時に初心に帰って素直さを取り戻すこと
大人になると、学生時代のように好きという感情だけで動くことは難しくなる。特に結婚を視野に入れた相手を探すとなおさらだ。
打算で恋愛をすることも、傷つくことを恐れて一歩踏み出さずに終えることも、言葉からではなく行動から察することも、相手に好かれるために偽りの自分を演じることも増えるだろう。
しかし、この作品から学べるのは、相手に真っ直ぐに向き合う素直さである。
恋愛は自分の気持ちを振り回す、めんどくさい側面も持つ。
だからこそ、時に、頭で考えるのではなく「本当はどうしたいか」という素直な気持ちを取り戻しながら、自分と相手に真っ直ぐに向き合うことが、誠実な良い恋をする秘訣なのかもしれない。
真っ直ぐすぎるほど純粋な主人公・ひかりと、徐々に心を入れ変えていく“ガチクズ”蓮嗣の特殊な恋模様がそんなことを教えてくれた。
作品情報
大キライとプロポーズ~入れ替わった婚約者がガチクズだった件~
東ねね
集英社マンガMee(https://manga-mee.jp/)にて配信中