伊万里焼で有名な佐賀県伊万里市。人口約5.4万人の暮らしを支えているのがスーパーマーケット「ファインズたけだ」だ。生鮮食品を扱うローカルスーパーで、現社長の父親が創業し、母親に引き継がれた後、外部のスーパーで経験を積んだ竹田氏が社長に就任、副社長が実弟である家族経営。
スーパーの販売ツールといえば今も昔もチラシが有効だが、なぜローカルスーパーは動画配信を始めたのだろうか?
「きっかけは3年前に、当時の社長だった母が商工会議所の会合で『おたくのネット対応遅れているよ』と言われたことです。母に相談されてネットを見てみると『スーパーたけだ』や『たけだストア』とかもう店名から間違った情報が載っていて…。
Google Mapに掲載されている営業時間なども違っていて、まずはここから正しい情報を載せるようにしようと思いました」と竹田氏。
「日本一面白いスーパー」を自称するローカルスーパー「ファインズたけだ」のSNS戦略
原材料の値上げ、円安の影響などで小売業は厳しい経営を迫られている。そんな中、佐賀県伊万里市で日本一面白いスーパー」をスローガンにしている「ファインズたけだ」はYouTubeやTikTokを使い集客し、今やTikTokのフォロワー数は5万人に届こうとしている。なぜローカルスーパーが動画配信を始めることになったのか、「ファインズたけだ」の社長・竹田智史氏にうかがった。
きっかけは「おたくのネット対応遅れているよ」の一言

さらにコロナ禍になり、よりネットで情報発信する必要性を感じ、また、正しい情報を広く伝えることが大切だと実感した。
ホームページを整備していく中で、毎日地元のケーブルテレビでお買い得情報コーナーに出演している経験を活かして、YouTubeでの発信に挑戦することに。

ファインズたけだのYouTubeチャンネル
「ローカル部門で1位になろう! 伊万里市の人口(5万人)のフォロワー数を目指そう!と思って始めました。
お買い得情報と同時に伊万里市のスポット情報なども配信して地域に貢献したいという想いがありました。
あとはYouTubeをやる前から人気のイベント『ラーメン積み上げ大会』『半額シールを貼りまくるじゃんけん大会』の告知やレポートの配信がしたかったんです。
これを見てくださる方が多くなり『次はいつやるの?』とお客様に聞かれて手応えを感じました。直接、集客や売り上げにも結び付いて今でも人気です!」
顔が見える安心感を売ることが大切
YouTubeでの配信をきっかけに、Twitter、Instagram、Facebook、TikTokとあらゆるSNSを活用していった。
「動画作りは手探りで、中には全然見てもらえない配信もありました。試行錯誤を続けていく中でイベント情報だけでなく、店内放送でマイクパフォーマンスする様子を動画配信しようと思いついたんです。
店内放送はお買い得情報や惣菜コーナーの揚げたて時間などお知らせしていて、これを踊りや歌でパフォーマンスすることに。弟の副社長が中心になって動画を作成し、TikTokに上げました」
衛生キャップにエプロンという出で立ちで、全力でおすすめ品を踊りながら紹介するユニークな動画が話題を呼び、とにかくバズった。
驚いたのは、地元の人以外に長崎県や福岡県など隣県から片道4時間かけて「動画見ていて気になったから」「実際に会いたい」と来てくれる人が増えたことだ。
今やTikTokのフォロワー数は4万9000人(2022年9月現在)を超えている。

TikTokのトップページ
「夏休みの時期になると大阪や神戸など関西から“動画を見て”と来てくださるお客様が増えて、広く知ってもらうという目的を達成できたと思っています。
それにスーパーで社長が顔出ししているところは少ないですよね?
動画を通して、商品を売っている人間の顔が見えるということは大切で、お客様に安心感を与えられると考えています。
小売業が厳しい時だからこそ、同じものなら『この人から買いたい』『このお店で買いたい』と思ってもらえるための販促ツールとして動画がすごく有効だと感じています」
スーパーは顧客にも従業員にも楽しい場所であってほしい
動画配信は、外への影響だけでなく「ファインズたけだ」の社内にも変化をもたらした。
「当社のパートさんは50代~60代の方も多いのですが、変なことやっているなと始めは感じていたと思います。ですが、動画がバズったことでお子さんやお孫さんから『母さんがパートしているスーパー、動画やっているね』とか『けっこう面白いよ』と言ってもらったと嬉しい報告がありました。
自分が働くお店が話題になっているというのは少なからずモチベーションアップに繋がっていると感じています」
お店でパフォーマンスしているとお客様の反応はどうなのだろうか?
「遠巻きに見ていらっしゃることも多いですが(笑)、目的は商品をしっかりおすすめすることです。普通の店内放送だとスルーされてしまうので、替え歌で歌ったりダンスしたりしています。
また、パフォーマンスが飽きられないように、店内で声をかけてもらえばお渡しする副社長シールを作りました。
コロナ禍ですが、お客様とコミュケーションは大切にしていきたい想いがあります。
スーパーって楽しい場所でないといけないと思っています。お買い物タイムを当社で楽しんでまた来たいと思ってもらえるとうれしいです」
また、原材料の高騰による値上げへの対策は、惣菜や加工品を多くするようにしている。
「さまざまなものが値上がりしているので、どうしても物に値段を反映せざるを得ない。
なので、惣菜や加工品を増やして買いやすく、すぐ食べられるものを増やしています。
この街でもライフスタイルの変化で、調理済みのものを食べる中食も進んできているので…」

副社長に声をかけるともらえるシール
今後は、カタログギフトを活用した通信販売にも力を入れていく予定だ。
「動画のフォロワーが神奈川県や関東エリアに多いので、そんな人たちに私たちがおすすめする商品をお届けできたらと考えています。
『味の直行便』という全国の美味しいものや名産を集めたカタログギフトを扱っているのですが、販売数が全国600の加盟店の中で当社は3年連続日本一なんです!
売れ筋商品のデータがあるので、今後力を入れていきたいと思っています」
スーパー業界が取り巻く厳しい環境の中にあっても竹田社長の言葉は明るい。
「大手スーパーにはできない、ローカルスーパーの良さというのがあります。何度も言うように『顔が見える』というのはお客様に安心感を与えます。
このことこそ、ローカルスーパーの最大の強みだと思うんです。当社は2019年から日本一面白いスーパーと唱っていますが、いつもお客様や従業員が面白い!と思ってもらえることを考えていきたいと思います。そこはブレません!」

いつもパフォーマンスがキレキレの副社長・竹田温史氏(左)と社長の竹田智史氏(右)
取材/百田なつき
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