株式会社Gaudiyは、NFTなどのブロックチェーン技術を活用した「Gaudiy Fanlink」を開発するスタートアップだ。Gaudiy Fanlinkを用いることで、IP(知的財産コンテンツ)に基づいたコミュニティが構築でき、ファン同士が集うことができる。
昨今、日本でもNFTに関する話題を多く耳にするようになった。まさに「Web3」と呼ばれる新たな時代の訪れを予感させるが、Gaudiyはそんな時代の潮流に乗ったビジネスを展開しているといえるだろう。
ところで、なぜこれほどまでにNFTが注目を集めているのだろうか。Gaudiyについて語る前に、この点をクリアにしよう。
NFTは日本語で「非代替性トークン」を意味する。読んで字のごとく、ブロックチェーン技術を活用することで、唯一無二のデジタルデータを生成できる。またブロックチェーンは、改ざん不能な形で履歴を残し、NFTが誰に渡ったかトレースすることも可能だ
デジタルの強みの1つに、コピーが容易であることが挙げられる。読者の方も、Wordなどで「コピー&ペースト」によって文書を作成した経験はあるだろう。
しかし、この利点はデジタルの限界も露呈していた。特に「お金」のような、簡単に複製されては困るものに転用するのは困難であった。ところが、ブロックチェーン技術が誕生したことによりこの弱点が補完され、ビットコインなどの暗号資産が世界に広まった。
唯一無二のデジタルデータであれば、供給が限られて贋物も無くなるため需要が高まる。これにより価値が付き、NFTアートなどが高額で取引されるケースが生まれた。
石川氏は現在のNFTを取り巻く環境についてこう語る。

1万人を超えるファンが集う。「約束のネバーランド」公式ファンコミュニティ誕生物語
今年に入り、大きな注目を集めている「NFT」。それを活用して、「約束のネバーランド」のファンコミュニティ「みんなのネバーランド」の運営を行っているのが株式会社Gaudiyだ。今回は、代表の石川裕也氏に「みんなのネバーランド」が誕生した経緯などを聞いた。
逆風の中で、ブロックチェーンの可能性を信じて起業

「私がGaudiyを立ち上げた時は、コインチェックの暗号資産流出事件がありブロックチェーンビジネスに対して逆風が吹き荒れていました。その時のことを考えると、ブロックチェーンの可能性を信じて起業した私ですら、短期間で再びここまで盛り上がるとは、予想もしていませんでした。NFTは想像を超えるスピードで進展しています」
コンテンツへの”愛”がIPを持つ企業を動かした
石川氏がブロックチェーンに関心を持ち始めたのは2017年頃。当時ブロックチェーンを活用したゲームが脚光を浴び始め、それに関連したコミュニティで起きていた異様な盛り上がりを目の当たりにした。
「コミュニティには、全体でわずか1万人ほどしかいない。でも、ライブビューイングとか仮想空間上でイベントを開催すると、ワーッと盛り上がるんです。しかも、ブロックチェーンを用いれば、NFTやトークンを発行することで参加者にインセンティブを提供して活動を盛り上げることもできる。これには可能性を感じましたね」(石川氏)
さらに、石川氏はゲーム以外にもこよなく愛しているものがある。その1つが「マンガ」だ。インタビューの際には「週刊少年ジャンプで『ONE PIECE』や『SAKAMOTO DAYS』などを読んでいるし、少年ジャンプ+も愛読しています」と語るほどだ。
このコンテンツへの愛が、IPを持つ各企業を動かしたのだろう。Gaudiyのホームページを見ると、集英社以外にもIPを持つ企業がGaudiyとパートナーになっていることがわかる。
「ジャパニメーション」という言葉が象徴するように、日本は世界に誇るIPを数多く生み出している。後編で触れるが、これらはWeb3時代においてキラーコンテンツになりうる可能性があり、IPを持つ企業とタイアップできるのは大きな強みになる。わかりやすい例では、影響力があるIPに関連したNFTを発行できれば、それは大きな経済的価値を持つ可能性が高い。

石川氏は自身がIPを持つ企業とタイアップできた理由をこう分析する。
「普通、NFTビジネスで協業を打診する際は”儲かる”ことを前面に出します。しかし、自分はコンテンツのファンなので、まず”ファンが喜ぶ”にはどうすればいいかを考える。これにより競合企業と異なるアプローチができ、良い関係が築けたのだと思います」
そんな石川氏の想いが身を結び、タイアップが実現した事例の1つが、「約束のネバーランド」のファンコミュニティ「みんなのネバーランド」なのだ。
ブロックチェーンでコミュニティを構築するメリット
「みんなのネバーランド」の誕生は、人づてに紹介された「約束のネバーランド」の担当編集者・杉田卓との出会いがきっかけだった。「作品が終わっても、ファンが集える場所ができたらいい」。2人の考えは一致し、Gaudiy Fanlinkで「みんなのネバーランド」を構築することになった。
「みんなのネバーランド」には、1万人を超えるファンたちが登録している。基本機能は、ファン同士の交流をサポートするものだ。コメントや画像のアップロードが可能な点は、SNSと大きく変わりはない。しかしブロックチェーンでコミュニティを構築しているため、NFTを活用してイラスト・動画などのデジタルコンテンツを特典として提供できるようになっている。

「例えば映画の告知などに貢献すると、杉田さんのコメントが音声で聴けたり、世に出ていないネームなどが見れたりします。ファンからすると、これはたまりません」(石川氏)
「みんなのネバーランド」の特徴は、これだけではない。Gaudiy Fanlinkで構築したコミュニティはバーティカルに閉じることができる。これはコミュニティを管理・運営する側にとって、大きなメリットがある。
「例えば、あるコミュニティで2次創作が活発になったとします。もしこれがオープンなSNSで始まった場合、著作権を持つ作家さんや企業が意図しない形で創作されてもすぐに対応できないかもしれません。しかし、ブロックチェーンを用いたコミュニティであれば、誰が創作を行ったかブロックチェーンに記録され、管理も容易にできます」
一見すると、管理下に置かれることで創作がやりづらくなることも懸念される。しかし、石川氏によれば「逆にルールなどが整備されて管理されている方が、安心して2次創作ができるという考えを持つファンもいる」という。
またコミュニティをブロックチェーンを用いてバーティカルにするメリットはこれだけではない。SNSのようなオープンな空間とは異なる「居心地の良さ」を、ファンに提供できるという。
* 後編へ続く
撮影/遠藤素子
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