「1年かそこいらで値段が2倍」

映画『007』シリーズに登場し、海外のオークションで1億円以上の値段で落札された“ボンドカー”のトヨタ2000GT、日本を代表するスポーツカーとして世界中で人気のスポーツカー、フェアレディZ初代モデルのS30、ハコスカの愛称で親しまれたニッサンの初代GT-Rやケンメリと呼ばれた2代目のGT-R……。

たった1年で1000万円→2000万円。業者も「常軌を逸した価格の上がり方」と驚く“国産旧車バブル”の裏側とは(前編)_a
日本を代表する旧車、トヨタ2000GT。ヤマハの協力を得て開発され、1967年に発売。新車価格は238万円で累計337台生産。日本が舞台となった映画『007は二度死ぬ』でボンドカーとして採用された
たった1年で1000万円→2000万円。業者も「常軌を逸した価格の上がり方」と驚く“国産旧車バブル”の裏側とは(前編)_b
ニッサン フェアレディZ。1969年発売の初代S30は「ポルシェの半値で同等の走り」と評され、国内のみならず、アメリカやオーストラリアなどでも高い人気を誇った。発売当時、最も安いモデルは84万円

1960~70年代に生産された国産スポーツカーは、10年ほど前からすでに世界的に高い人気を誇っていた。しかし、ここ3年ほどの間に日本の旧車の価格が急激に高騰。驚きの状況が生じているという。

「僕のお客さんでフェラーリは屋外に置いてカバーをかける程度で、ニッサンのフェアレディ240ZG(1971年発売)はしっかりと屋根付きのガレージに置いてあるという方がいます。普通、逆じゃないの?って思いますよね(笑)。

あとこの間まで同じくフェアレディの240ZGに乗っていたお客さんがいて、中古車屋に行ったら、フェラーリのコンバーチブル(オープンカー)の360モデナがあったそうです。それをフェアレディと交換してくれと言ったらしてくれたそうです。しかも手元に数十万円も返ってきたと言っていました。ちなみに、その中古車屋が購入したフェアレディZを1250万円で売りに出したら、即売だったそうです」

そう語ったのは、フェアレディZをはじめとするニッサンの旧車を主に扱っている「スピードショップ クボ」(東京都足立区)代表の久保亨さんだ。1975年創業の老舗旧車ショップの久保さんでさえ、「今の価格の上がり方は異常です。正直、どこまで上がるかわからない」と語っている。

「例えば、フェアレディ240ZGは7~8年前までは500〜600万円で買えました。でも今は1000万台後半から2000万円。4倍近くになっています。同じ時代に発売されたケンメリの2000GT(1976年型)は1年かそこらで値段が2倍になっているのを見ました。1000万円だったのが2000万円。驚きで言葉がありません。初代スカイラインと2代目のレース仕様車GT-Rならまだしも、(2000GTは)そこまで人気のあるモデルではなかったのですが」

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「スピードショップクボ」の久保亨代表
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日本のモータースポーツ黎明期にツーリングカーレースで伝説を残したスカイラインGT-R。1969年に登場した「ハコスカ」は世界中で人気があり、今では3000万円以上が当たり前。生産台数200台を切るケンメリのGT-R(1973年発売)はもはや言い値の世界。5000万円とも1億円とも言われる
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旧車イベントの会場で2000万円以上の値が付いた1976年型のスカイラインハードトップ2000GT。稀少なGT-Rにつられる形でこのモデルも価格が高騰し、わずか1年で価格が2倍となったという