コンビニを選ぶ理由の多くは自分の生活圏との親和性にあるが、取り扱う商品そのものの魅力が吸引力となり、今では「わざわざ行く」場所にもなっている。
“生コッペパン”“ファミマ・ザ・クレープ”“フラッペ”などヒットを連発しているファミリーマートは、わざわざ行くコンビニの筆頭だ。

新しもの好きのファミマが次に仕掛ける“楊枝甘露(ヨンジーガムロ)”は、タピオカなみのメガヒットスイーツになるか?
今話題のスイーツ、“楊枝甘露(ヨンジーガムロ)”にもうトライしてみただろうか? 先行発売し、SNSを中心に話題を集めているのがコンビニのファミリーマート。流行を先取りするアンテナの高さに迫った。
ファミリーマートの強みは“先取り感”

ラインソックスで知られるアパレルブランド“コンビニエンスウエア”や、コンビニコスメ“sopo(ソポ)”なども展開し、新たなトレンドまで生み出している。
ファミリーマートのこうした“先取り感”の要因はどこにあるのか。広報部の寺岡良輔さんに聞くと、「新しいアイデアを受け入れるムードがある」との答えが返ってきた。

「2020年にCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に就任した足立光は、過去にもさまざまな話題性のある企画を仕掛けたヒットメーカーです。とがった企画も積極的に提案、実践し、社外に広めています」
プライベートブランド“ファミマル”の“縦型ビッグサイズ 横浜家系豚骨醤油ラーメン”を手がけるなど、多くのヒット商品を担当してきた経験のある商品本部地区MD部の石田照雄さんは、取引先との密なコミュニケーションはもちろん、社内の連携も世の中のムードを先取りする大きな要因となっていると語る。
「競合他社に負けない商品開発や品揃え、個性による差別化は、お客さまに足を運んでいただくための重要なポイントです。ファミリーマートでは、売り場や品揃えを担当する商品企画部という部署が、毎週、トレンドなどの情報をキャッチし共有してくれています。それらを踏まえて、自らもアンテナを張ってトレンド情報に興味を持ち、現場を見て情報を収集することで、世の中への変化対応ができていると思います」
トレンド予測ランキング1位の“楊枝甘露”

楊枝甘露を担当した商品本部地区MD部の石田照雄さん
6月からファミリーマートで販売を開始し、SNSを中心に話題となっているのが“楊枝甘露(ヨンジーガムロ)”。発祥は1980年代の香港だが、2021年に台湾でブレイクし、日本でも2022年11月にコストコで大型ボトルタイプの販売がスタートすると、瞬く間に人気となった。
「コストコさんで品薄欠品状態になっただけでなく、2023年のトレンド予測ランキング(消費者経済総研)の食べ物、スイーツ部門で1位を獲得したとの情報があったため、いち早くファミリーマートで取り扱うべく、メーカーのフルッタフルッタさまにお声がけしたのが始まりです」(石田さん)
フレッシュな生マンゴーの果肉に、小粒で弾力のあるタピオカとグレープフルーツ果汁、ココナッツミルクをブレンドした濃厚なドリンクは、まさに飲むデザート。ファミリーマートでは飲み切りできる小型ボトルサイズで販売している。
「濃厚ではあるものの後味はすっきり爽やかで、とても飲みやすいと思ったのが第一印象です。スイーツ好き&新しいもの好きの私としても大満足でしたし、今までにないスイーツとしてぜひおすすめしたいと思いました」(石田さん)

楊枝甘露(左)と、同じく関東で先行発売中の台湾フルーツティー。共に350円(税込378円)
現在は東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県で先行発売中。20〜30代の女性を中心に、昼過ぎのデザートとして受け入れられているという。
「店頭に置くだけではこの商品の価値を伝えることができないため、レジの上に設置してあるデジタルサイネージで広告を打って売り場に誘導したり、売り場ではポップを掲載し、ファミリーマートでの先行発売を大々的にアピールしました。メーカーさまには、TVCMやSNSでの告知に力をいれていただき、対外的に情報発信をしていただきました。
おかげさまで多くの反響をいただきまして、関西圏の方からは『全国販売はいつですか?』などのお問合せをいただいています。現段階での全国展開は決まっていないものの、少しずつ地区拡大をしていけたらと考えています」(石田さん)
チャレンジングだった価格設定

おいしさも新しさも話題性も申し分ない“楊枝甘露(ヨンジーガムロ)”だが、235gの小型ボトルで税込み378円という価格は、正直、割高感がある。このサイズ感の商品の多くが250円前後の中、300円を超える価格はチャレンジングだったという。
「蓋を開けてみると、東京都や神奈川県などの都市部を中心に販売が好調でした。最近は、お客様の嗜好が低価格帯と高価格帯に二極化してきている印象があります。付加価値がついているのであれば、高い商品でも欲しい方は買う。“楊枝甘露(ヨンジーガムロ)”に関してはまさに高価格帯の商品としてヒットしています。
毎日飲むものではないけれど、日常のご褒美としてちょうどいい。そのプレミアム感が受け入れられている理由のひとつだと思います」(石田さん)
現在、コストコ以外で手に入るのはファミリーマートだけ。いち早く流行をキャッチした感度の高い客層にとって、わざわざファミマに足を運ぶキッカケになっている。
ただし、台湾スイーツとして爆発的なヒットとなったタピオカと違い、一般的な知名度はまだ低い。“楊枝甘露”という字面を見て誰もが“ヨンジーガムロ”と読めるようになる時代が来るのかに注目だ。
取材・文/松山梢
写真提供/ファミリーマート
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