「SNSが原因で懲戒免職?」「子どもの発熱を理由に休んだら罰金?」その社内規則はここがおかしい、ここがグレーだ!
「なんかおかしい…これってうちの会社だけ?」そんな会社にまつわる「グレーゾーン」について社労士の村井真子さんが解説した『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)。今回は社内規則に関する一部を抜粋・再構成してお届けする。
職場問題グレーゾーンのトリセツ#1
奥深き就業規則の世界
私は社会保険労務士という仕事柄、いろいろな会社の就業規則を拝見します。そうしたときに感じるのは、就業規則にその会社の個性が表れているということです。雇用促進や職場改善などの助成金を使う時に、就業規則に新しい規定を追加することが多いですが、そのときにあわせて確認するのは次の二点です。
①かつて合法であったが、法改正によって現在は違法に変わった部分
②新設の法律により規定しなくてはならないが、まだ未策定な部分
①や②についてまめに対応している会社は、部署でしっかりと管理している、もしくは専任の担当者がいるんだなとわかります。

また、読んでいておもしろいのは服務規定と懲戒規定です。「居眠りを10分以上しない」「冷蔵庫の中の食品は賞味期限をよく確認して食べる」という規定を実際に見たことがあります。10分なら居眠りも認められるのかな? と思ったり、賞味期限切れの食品で腹痛を起こした社員がいたのかな(もしかして労災?)なども想像されます。
このように会社独自の考え方や働くうえでの事情が就業規則に表れるので、モデル就業規則をそのまま使う会社に比べて、そこには「人格」のようなものさえ感じられるのです。でも、意外と就業規則を隈なく読み込んでいる人は少ないようです。
おもしろい記載を見つけてその会社の人にお話しすると、「そんな規定ありましたか?」と驚かれることもあります。就業規則には会社の歴史が反映されていることもありますので、一度は熟読してみるといいでしょう。
職場で撮った楽しい写真。
SNSにアップしたら懲戒処分を受けました!
プライベートでSNSを楽しく活用する人は多いでしょう。でも、オフィスや会社のイベントで撮影した写真をSNSにアップロードする行為はコンプライアンス上、かなりきわどいものといえます。そうした写真を会社の許可なく公開すれば、懲戒処分を受けることも十分ありえます。
企業がSNSへの写真投稿に厳しく反応するのは、写真には撮影者が想定する以上に多様な情報が含まれているからです。
例えば、職場のデスク上に置かれた商品はスポンサー企業の競合会社のものだったりしませんか? たった写真一枚でも、企業は運営上のリスクが増えることになります。また、写真の中に第三者が写り込んでいた場合、肖像権侵害にあたる可能性が高まります。知人が見たら個人が特定できるレベルで写っている写真は、なおさらです。プライバシー保護の観点からも、このような写真は公開するべきではなく、もし公開するとしても、モザイクをかけるなど個人の特定ができないような配慮が必要です。

SNSは個人でも手軽に情報発信ができる便利なツールですが、近年は個人のSNS投稿が原因で、いわゆる炎上状態となり、大きな損失が出る例も増えてきました。もちろん企業がスタッフに対してSNSの利用を禁止することはできませんが、顧客情報や守秘義務の漏洩につながることや、肖像権の侵害に当たるような投稿に対して、就業規則や企業内ガイドラインで制限をかけることは合法です。
また、上場企業は業務に関する投稿自体がインサイダー情報にあたる可能性もあり、会社の信用にも関わります。意識の低い労働者を抱えている会社なのだと見られ、ネガティブな評価につながりかねません。
このように、就業規則に懲戒の規定があり、SNS投稿に関する記載があれば、会社は個人が行ったSNSの投稿に対しても懲戒処分を行うことができます。
アドバイス:
顧客情報や守秘義務にあたる内容、肖像権の侵害に関するものは、懲戒処分の対象になる場合があります。
子どもの発熱で欠勤連絡をしたら、
ペナルティがあると言われました
遅刻や欠勤、早退においてペナルティがあるという企業は、残念ながら少なからず存在するようです。子どもの発熱は突発的に起こります。また、本人の体調不良なども前もって予測できず、当日欠勤や出勤直前の連絡になってしまうのはしょうがないことでしょう。
やむを得ない理由でも金銭的なペナルティがあるのは、賠償予定額を定めることを禁止する労働基準法違反の可能性が高くなります。例えば、次の場合が当てはまります。
・遅刻すると一日分の欠勤控除になる。
・欠勤するときは自ら自分の代わりの人を探し、いなければ罰金を払う。
さらに、これが給与から天引きされていたら、賃金全額の原則にも違反します。もっとも、欠勤した一日分、遅刻や早退した時間分についての給与がカットされることは合法です(ノーワーク・ノーペイの原則)。

子どもの発熱時に労働者が使うことのできる権利に「子の看護休暇」制度があります。これは「育児・介護休業法」で保障された権利で、「未就学児を持つ労働者は年五日、子の看病等を理由に休むことができる」というものです。
この制度を使って休みを請求されたら会社は拒むことができません。また、制度利用のための医師の診断書は不要です。証明として提出を求めるにしても、保育園の欠席がわかる連絡帳や病院の領収証、市販薬の購入レシートなどでもよいとしています。
有給休暇とは異なり、会社が繁忙期であってもこの申し出は断れないとされ、専業主婦・専業主夫のパートナーがいても利用できます。休める日数の上限は、子どもが複数いた場合は年10日、突発的な発熱だけでなく、予防接種や乳幼児健診なども利用範囲に含まれます。
この制度で休んだ場合、該当する時間分の欠勤控除を行うことは合法ですが、人事評価の対象で不当に評価することは不利益扱いとされて禁止されています。
アドバイス:
罰金という金銭的なペナルティは、労働基準法違反です。
『職場問題グレーゾーンのトリセツ』(アルク)
村井真子

2023/5/23
1870円
216ページ
978-4757440128
ちょっと聞きにくい75のモヤモヤ疑問をすっきり解決!
「知らなかった」で損をしない、働く人の必携書
日本社会はかつてない速度で変化し、多様な働き方が定着しつつあります。
でも、法律は現場の変化に追いついていません。
また、法律を学ぶ間もなく、ぶっつけ本番で社会に出る人もたくさんいます。
「育休で配置転換?」
「テレワーク中のケガは労災?」
「業務指導をパワハラ呼ばわり!」
「会社に内緒で副業できる?」
「休日出勤って断れるの?」
「昇進拒否でペナルティ?」
「過去の病気で内定取り消し?」
例えば、何はセーフで、何がアウトでしょうか?
本書は、職場の問題に悩むビジネスパーソンのみなさんの参考になればと書きました。
知識を武器に、自分の環境を整えたり、トラブル時に応急処置ができることを願っています。
今日も明日も明後日も、みなさん一人一人が安心して働き続けていけますように。
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