美術史上最も成功した
芸術家ピカソに迫る二つの展覧会
2023年は20世紀最大の画家、パブロ・ピカソ没後50年の節目の年。それを記念してか、全国でさまざまなピカソ展が開催されています。中でも特に見逃せないのが、国立西洋美術館の『ピカソとその時代〜』。ドイツの美術商で世界有数のコレクターでもあったハインツ・ベルクグリューンの珠玉のコレクションが、ベルリン国立ベルクグリューン美術館からまとまったかたちで来日。いわゆる「青の時代」の作品から、キュビズム時代、新古典主義時代、そして、晩年近くの子どもが描いたような絵画まで、実に35点が日本初公開されています。
本展のメインビジュアルに採用されているのは、《緑色のマニキュアをつけたドラ・マール》。モデルとなっているドラ・マールはフランスの写真家でピカソの愛人の一人。《泣く女》のモデルとしても知られている人物です。ちなみに、彼女はテーブル上で指と指の間をナイフで高速に刺すゲームをよくしては、指を傷だらけにしていたそう。美術界きってのヤンデレキャラですね。
と、それはさておき。ベルクグリューンにも負けないピカソコレクションが、日本にもあります。それは、シガールでお馴染みのヨックモックの会長である藤縄利康氏が長年精選してきたピカソのセラミック(陶器)コレクション。質・量ともに世界有数といわれるそのコレクションの一部は、2020年に青山の住宅街の一角にオープンしたヨックモックミュージアムで観ることができます。「ピカソ=画家」。そのイメージがあまりにも強く、セラミック作品はピカソが手遊びで作ったものと思われがちですが、実は、ピカソが南仏の陶芸の街ヴァローリスで制作するようになり特に初めの2年ほどは、絵画や版画はほぼ制作することなく、セラミックの制作に専念していました。そのいちばんの理由は、作品を比較的安価に多くの人が手にし、生活の一部に取り入れてほしかったからだそう。現在開催中の展覧会では「モダン」をキーワードにピカソが遊び心を込めて制作したセラミック作品の数々が紹介されています。こんなに無邪気でお茶目な作品を数多く作っていたとは! きっと誰もがピカソを好きになる展覧会です。
『ピカソとその時代
ベルリン国立ベルクグリューン美術館展』
【国立西洋美術館】
東京都台東区上野公園7の7
開催中~ 2023年1月22日
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
https://picasso-and-his-time.jp
『ピカソのセラミック-モダンに触れる』
【ヨックモックミュージアム】
東京都港区南青山6の15の1
開催中〜2023年9月24日
TEL:03-3486-8000
https://yokumokumuseum.com/1776/