様式も判定も、不透明な部分が多い現在の“内申書”
中学生、また中学生の子を持つ保護者が高校受験を見据えた際、“内申書”を意識することは避けられない。正確には“調査書”、一般的には“内申書”と呼ばれる書類には、中学3年の12月までの9教科の成績を5段階評価したものや、出欠状況、部活動や生徒会活動などの様子といった項目が並ぶ。これらを学級担任はじめ、各教科の担当教員が記入し、作成していく。
元文科省職員で、2022年7月より名古屋市教育長を務める坪田知広氏は、全国51校の国立高等専門学校を設置・運営する国立高専機構理事の職に就いていた頃に、調査書(内申書)の問題に気づき、改革を進めた経験を持つ。
「現行の調査書の問題点はいくつかあります。様式の問題、判定の透明性の問題、担任をはじめとする教師の手に内容が委ねられているというプレッシャーの問題などです。
まず、様式については、本当に合否判定に必要なのか疑問を抱かざるを得ない項目が多々あります。また出欠状況についても、欠席が多いと不合格になるのか、実際にどのように判断に使われているかは不明です。
合否判定に直結しない項目が入っているのは、受験生にただ不安を煽るだけでメリットがないですよね。そこで国立高専機構では、調査書の項目を吟味し、必要最低限の項目に絞った様式に改めるように各校にお願いをしました」
簡略化にあたっては、文科省の考え方のほか、広島県教育委員会が2023年春の入試から実施する項目を絞った調査書の様式も参考にした。その結果、一般入試で学力検査を受ける志望者は9教科の評価のみを記入、推薦入試の場合のみ部活動や生徒会活動等の情報も記入する形になった。
「どこの自治体であっても、項目を見直していくと同じような様式になるはずです。従来の様式が使い続けられているのは、決してそれが必要だからではなく、単純に議論が進んでいないから。各教育委員会は、調査書の様式見直しよりも、入試問題の作成にリソースを割いているのです。
また、提出する中学校側と、それを受け取る高校側との合意も必要なので、様式の変更をどちらが言い出すかというところもあるのでしょう。誰かリーダーシップを持ってできる人がいれば、すぐに改革はできると思います」