ホットシェフは小さな田舎町から始まった
セイコーマートは店舗売上2000億円に向け、コロナ禍以降20カ月以上連続で増収を続けている。
その追い風となっているのが、メーカー事業だ。1994年、店内調理で惣菜や弁当を提供する「ホットシェフ」併設の店づくりをスタートさせると、翌年にはオリジナル商品の販売を開始。以来、食品メーカーとしての顔を併せ持ち、徐々にその規模を拡大させながらファンを増やしてきた。
北海道出身の筆者もホットシェフを愛用している。店内の厨房で炊いた米でつくる大きめのおにぎりや、カツ丼、豚丼、ホクホク食感のフライドポテト、店で粉付けして揚げるフライドチキンなど、出来立てが並ぶ温かいショーケースは、まるで弁当屋のようだ。
今では高い支持を得ているホットシェフだが、当初は苦難の連続だったという。
1994年12月、十勝の足寄(あしょろ)町内の店にひっそりと設置されたのがそもそもの始まりである。当時の足寄町の人口は約1万人、国道に面しているので比較的利用客は多いものの、都市部からかなり距離はあり、「失敗してもバレないように」と選んだという。なんとも消極的なスタートだ。
アメリカのコンビニエンスストア業態を参考に1号店を開店したセイコーマートは、1980年代後半から現地に足を運び研究を重ねていた。
アメリカでは当時より店内調理のピザ、サンドウィッチ、ホットドッグなどが提供されていたという。
「すごく美味しくて、それを目当てにお客さんが来店するんです。ガソリンスタンド併設のコンビニに給油の間に立ち寄り、コーラと出来立てのピザを買って車内で食べながら移動する。そういう光景を見た創業者が日本の店でも出来立てを提供したいという夢を持っていました」
こう語るのは、セイコーマートを展開するセコマ渉外部の佐々木威知さん。
「日本で店内調理しても何が売れるか全くわからない。じゃあとりあえず何でもやってみようということで、最初は麺類やみそ汁を出したりもしましたね。チャレンジして失敗して、またチャレンジする。その繰り返しでした」