ジョブズ没後もトップの座を維持し続けたアップル
2011年、共同創業者であるスティーブ・ジョブズが亡くなる少し前に、時価総額世界ナンバーワン、つまり「世界一お金持ち」の会社になった米・アップル。それ以降、何度か2位の座に落ちたことはあるが、それも一時的で、ほぼずっとトップの座に君臨し続けている。
そんなアップルだが、2019年にデザイン部門長のジョナサン・アイブ、2020年にはジョブズとともに幾多の製品発表を行ったマーケティングトップのフィル・シラーなど、ジョブズの腹心たちが次々と退任し、経営陣は大きく様変わりしている。果たしてアップルの行く末は、この先も安泰なのだろうか。
ここでもっとも注目すべきは、現在のアップルのトップ、ティム・クックCEOだろう。ジョブズが「稀代のカリスマ経営者」だったことから、アップルの成功をすべてジョブズのおかげと見る人も多いが、実はクックこそがジョブズを成功へと導いた影の立役者だ。
アップルを一度追い出されたジョブズが経営トップに戻ったとき、同社は深刻な赤字経営で、すぐにでも潰れそうな状態にあった。その赤字の最大の原因である膨大な在庫を整理し、財政を立て直し、同社の業務のコスト効率を大幅に改善したのがクックだった。
クックがいたおかげで、ジョブズとデザインチームが、ほかのどの企業もチャレンジしたことのなかったような新しい製品デザインに挑む財政的な余裕が生まれた。クックこそ、その後のアップルを大きな成功に導いた存在だと言えるのだ。
たしかにアップルの魅力の大部分は、ジョブズ率いる経営陣とデザイン部門が生み出してはいたが、それを支えていたのがクックだ。その後ジョブズが亡くなり、クックが経営トップに立ってからのアップルの魅力は、少し質が変わった。