“全集中”からの「地に足をつけて」
「最後は“全集中”で、なんとしてもやらせないという思いでした。(怪我からの復帰で)コンディションは上がっています。次のコスタリカ戦はもっと体が動くはずです」
カタールW杯、日本がドイツを2−1と逆転で下した後、ミックスゾーンに出てきた板倉滉は表情を輝かせて語った。戦い切った自信がみなぎっていた。W杯でドイツを破るのは快挙だ。
「でも、地に足つけて」
11月27日のコスタリカ戦に向け、そう付け足したのは当然だろう。そこで敗れたら、せっかくのドイツ戦の金星の価値も半減してしまう。一方で、ここを勝てばドイツの結果次第で早々にベスト16進出が決まる。
では森保ジャパンは、コスタリカを相手にどう戦うべきか。
前回のドイツ戦は、事前に公開したプレビュー記事に近い流れとなった。
森保ジャパンは「耐えて守る」形を選択。ピッチに立った選手の感覚では、もっとボールを持つべき、という焦りはあったようだが、森保一監督が決めた戦術を運用した。
久保建英は左サイドで相手のサイドバックを阻み、小さな体を張って潰しあっていた。本来は得点を奪うことが目標の前田大然もプレスとプレスバックを繰り返し、守備のフィルターになろうとしていた。日本は「たとえ面白くないゲームとなっても」一丸になって耐えた。
しかし、実状はサイドを数的優位で支配され、中央ではボランチが度々、背後を取られ、失点を重ねてもおかしくなかった。実際、33分に権田修一がPKを与えて失点。彼のミスだったが、それ以前に守備陣が崩されていた。
ただ、そこから日本は粘り強く戦った。後半、撹乱されていたサイドを修正するため、5バックを採用。セットして守り、アドバンテージを得られるようになった。ほぼ試したことのないシステムだけに当初は戸惑ったが、ドイツの攻撃を見事に吸収した。
酒井宏樹がウィングバック、伊東純也が攻撃と守備の補助と役割が明瞭になって守りが安定し、攻めにつながった。