社会的に弱い立場にある子供の方が依存になりやすい

日本には、依存症の子供たちを治療する医療機関が数多くできています。そのうちの1つである高嶺病院(山口県)の佐々木順院長は、拙著での取材に次のように語っていました。

「(ゲーム人気に拍車をかけているのは)昨今の社会状況があります。五輪にeスポーツを競技として組み込もうとする動き、プロゲーマー養成コースを設置する専門学校、文化人やユーチューバーがゲーム実況などで多額のお金を稼いでいる実態。子供たちの目には、ゲームの素晴らしい面しか映っていないのです。

私はゲームを完全悪だと言いたいのではありません。ただ、たとえば東大を卒業して実業家となって、宇宙事業までやっている堀江貴文さんがゲームをやっているのと、ネグレクト家庭でゲーム依存になってご飯も食べられないようになった子がやっているのとでは意味が違いますよね。これはきちんと切り分けて考えなければならないものだと思っています」

この病院で行われているゲーム依存の子供に対する取り組みについては、拙著をお読みいただければと思います。

本記事で指摘したいのは、社会的に弱い立場にある子供の方が依存になりやすいのであれば、社会の側がきちんとその実態を把握し、何でもかんでもいいよと肯定しないこと。困難な子供がより大きな困難を抱えないように、何をしなければならないのかということを、広く議論する必要があるということです。

これだけ依存症の子供が増えている今、良い悪いの二元論ではなく、どうするべきかという有意義な議論が社会全体で行われることが求められていると言えるでしょう。

取材・文/石井光太