『羅生門』に感じた強烈な凄み
これまで海外作品を取り上げることが多かった本連載だが、今回は日本映画界の巨匠である黒澤明監督作品を紹介したい。
最初に黒澤作品を見たのは中学生の頃。
当時よく通っていた大阪ステーションシティシネマでリバイバル上映されていた『羅生門』(1950)だった。
館内は自分の親のまた親世代の観客で超満員。
映画が始まると、雨の降る羅生門で男が佇む冒頭のシーンから、羅生門がアップで映し出されるラストシーンまで、“迫力がある”なんて言葉では言い表せない強烈な凄みを感じた。「この人たちは、この映画を撮ることに命をかけているんだろうな」と圧倒されたのを覚えている。
その中でも一際、狂気をまとっていたのが、多襄丸(たじょうまる)を演じる三船敏郎だった。
調べてみると黒澤明監督作品には欠かせない存在のようで、ほかにも『七人の侍』(1954)や『椿三十郎』(1962)などに出演。一度は聞いたことのあるこれらの作品は、黒澤と三船の名タッグによって生み出されているものだった。