時間が経つほどおかしくなっていく体調。
起きようとするとめまいがする。
体がだるいのになんだか胸がドキドキする……これはなんかおかしい。
寝転びながら、一生懸命水分を摂り、ダンナにアイスノンを持ってきてもらい、首や脇を冷やしてみた。
そう、このあたりから、もしかして熱中症なのかも?と思い始めたから。
大丈夫、熱中症だとしたら対策はあっている。これまでの知識を総動員して、気持ちを落ち着かせようとする。
でも、何をしてもいっこうによくならない。
病院……という言葉が頭に浮かんだ。
休日の夜7時、しかもお盆……今からどこにいけば……。
幸い、うちの近所には大きな救急病院がある。そこに電話して診てもらえないか聞いてみようか、とダンナと相談していたら、ふとももがけいれんし始めた。
!!! これはヤバい!
絶対、おかしい!
対策を講じても状態に改善が見られないときはただちに医療機関へ。これはどの熱中症対策サイトにも書いてある。迷っちゃいかん。
……で、救急車を呼んだ。
おそらく電話して10分くらいで来てくれたのであろうが、その間にどんどんけいれんは強くなり、ふとももだけでなく、アゴや口もがくがくするようになっていた。
正直に言う。
ものすごく怖かった。
不安で辛くて、ただただ怖かった。
トータル1リットルの点滴
その後、救急病院に搬送され、すぐに点滴を500ml。
その間に血圧、心拍数、血液検査までしっかりしてくれた。
その結果、熱中症による影響で内臓が大きなダメージを受けているような数値は出ていないので、大事ではないであろうということだった。
点滴のおかげなのか、病院についたという安心感なのか、けいれんも動悸もおさまってきた。
心底ほっとした。よかった、病院に来て……。
そして無事に点滴も終わり、さあ、帰るか、と起き上がる。
実はこの時点で私は、もうすっかり体はふつうに戻っているのだろうと思い込んでいた。
かれこれ4時間近く安静にしているし、点滴もして水分補給も十分だし……と起き上がったとたんに、グラリ、とめまいが。
立てない。
「あの、このベッド、揺れてるんですか?」
と看護師さんに尋ねてみるけど、そんなわけない。
もう1パック点滴をすることになった。これでトータル1リットルだ。
途中、我慢ができなくなって、おトイレにいかせてもらう。
たくさん、尿が出た。これだけたくさん尿が出るということは、もう水分は足りてるということなのかな? 素人考えが頭をよぎる。
こんなとこでひっくり返らないようにしなくちゃな、なんて慎重にズボンをあげながら、ふとトイレの鏡でTシャツを裏返しに着てることに気づいた。
相変わらずのオッチョコチョイぶりにちょっとだけ笑って、少しだけ救われた気がした。
結局、2パックの点滴のあとも、ふらつきが消えることはなかったのだが。
そして、ここからが本当の試練の始まりだった。
安静にして水分が満たされれば治るんじゃないの??
熱中症は軽度であれば、涼しいところで安静にして体を冷やし、水分・塩分補給すれば、すぐに回復する人がほとんだ。
でも、その後2~3日、いや1週間くらい尾を引くことも決して珍しくない、ということを、医師の説明で初めて知った。
「ですが、志沢さんの場合、検査結果からも重篤な状態ではないと判断しますので、帰宅して安静にして、引き続き水分を摂って、それでも改善しない、悪化するようでしたら、いつでも連絡をください」
という医師のアドバイスがなされ、帰宅することになった。かれこれ11時になっていた。
経口補水液を枕元に置いて、その日はそのままうつらうつらと寝てしまったが、翌朝目覚めてみると……全然治っていないのだ。しかも昨日はなかった頭痛までする。もちろんふらつきもだるさも残ってる。
頭痛は熱中症ではよく見られる症状だけど、昨日は痛くなかったのにあとから出てくるなんて……そして、こうしたときの頭痛には頭痛薬を飲んではいけないと聞いていたので、ひたすら経口補水液を飲み、横になっている。会社は欠勤せざるを得ない。
頭痛い、だるい、ふらふらする……こうした症状もつらいけれど、なにがつらいって……
不安なのだ!
こんなに尾を引くなんて、本当にただの熱中症なの? もっと何か違う病気じゃないの? ひとり寝ていると考えるのはそんなことばかり。
食欲ももちろんない。
ふだんきちんと食べている現代人の大人なんて1日くらい絶食しても死にはしないけど、さすがに水分だけではまずい、とバナナとヨーグルトを飲み下す。
歯を磨こうと舌をみたら苔で真っ白。血行も悪いのだろう。
これが熱中症発症翌日、1日めの状態だった。