夜逃げ同然の形で上京した西城秀樹
2015年4月13日。この日還暦を迎えた西城秀樹は、それを記念したアルバム『心響 -KODOU-』をリリースした。
それまでに2度の脳梗塞を乗り越えて復活した西城は、過去のヒット作のセルフカバーに加えて、新曲『蜃気楼』にもトライしている。
この作品は結果的に最後のアルバムになってしまったが、どの曲からもポジティブなチャレンジ精神が感じられて、実に力強い内容に仕上がっている。
意外なことに『心響 -KODOU-』は、1972年3月に発売されたデビュー曲の『恋する季節』から始まっていた……。
まだ少年だった木本龍雄(西城秀樹の本名)が、歌手として成功することを夢見て広島から上京したのは1971年の秋、15歳の高校1年生の時だった。
同郷の出身でロカビリー歌手だった藤本好一にスカウトされた木本少年は、父親の強い反対を振り切るようにして、夜逃げ同然の形で上京してきた。
そこからはヴォイス・トレーナーの先駆者、大本恭敬に師事して厳しい歌のレッスンを受ける一方で、縄跳びなどの運動による体力づくりにも励んだ。
そうした日課が終わったら、3畳にも満たない狭い部屋で寝るだけの日々が続く。
そんな木本少年のもとに、念願のデビュー曲が届いた。