斜め上まで発展し、ついにはアンドロイドに辿り着く
2000年代に生み出された“キムタク×お仕事ドラマ”というヒットの方程式は、『CHANGE』(2008年)の内閣総理大臣や『MR.BRAIN』(2009年)の脳科学者で、行きつくところまで行きついた感があった。
そして2010年代。“キムタク職業コスプレ”は斜め上まで発展していき、『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』(2013年)で、とんでもないステージに到達する。ジャンルはSFラブストーリーで、キムタクが演じたのはなんと100年後の未来から来たアンドロイド。とうとう人外になったのだ。
暗殺者に狙われるある女性の命を護るという使命をおびるキムタク演じるアンドロイド。命の危機に無防備な彼女の前に、アンドロイドが机の引き出しの中から現れる。ドラえもんを彷彿させる登場である。
愛を理解できないアンドロイドが敵から彼女を守り抜き、愛の奇跡は起こるのか――という突飛なストーリー。さらに『新世紀エヴァンゲリオン』監督の庵野秀明氏がコンセプト/設定協力に名を連ねるなど、鳴り物入りで始まるも……結果、“否”多めの賛否両論が巻き起こる問題作となった。
余談だが本作スタート当時のキムタクは渋みが出てきていた40歳。個人的な感想としては、彼に非・生命体を演じさせるのであれば、せめて20代のころにしておいてあげてほしかった。
このドラマ以降は、『A LIFE〜愛しき人〜』(2017年)の外科医や『BG〜身辺警護人〜』(2018年)のボディガードなど、“職業コスプレ”としては比較的落ち着いたラインナップが続く。
そして2020年代。『風間公親-教場0-』(2023年)で演じたのは、意外にも初の刑事役。ただし、普通の刑事ではなく新人刑事の指導官というキャラクターだった。
この連ドラは、警察学校の教官役でキムタクが初めて白髪キャラに挑戦し、冷酷無比な主人公を演じて人気を博したスペシャルドラマ『教場』シリーズの前日譚。
演技が一本調子で「なにをやってもキムタク」と揶揄されることもあったが、『教場』シリーズでは従来のキムタク節を封印した渋い演技で魅せ、冷徹な大人の男を体現していたため、「なにをやってもキムタク」から脱却。
キムタクをかっこよく撮るということは二の次にして、重厚な人間ドラマをシリアスに描こうという気概が感じられ、高く評価される作品となった。
――いよいよ4月25日の放送開始が迫る新ドラマ『Believe-君にかける橋-』でキムタクが演じるのは、大手ゼネコン所属で橋づくりに情熱を燃やす土木設計家。ヘルメットと作業服に身を包んだ、また新たな彼の演技と魅力が見られるだろう。
しかし、本作は単純なお仕事ドラマではなく、先の読めないサスペンスと心に染みる人間ドラマが織りなす壮大なストーリーになるとのこと。
彼の主演ドラマはよくも悪くも毎回大きな注目を集めるが、そんなプレッシャーを跳ねのけて、何度も何度も大ヒット作を生み出してきたのがキムタクだ。今作にも期待したい。
文/堺屋大地