中国人観光客の爆買い消失が痛手
資生堂は日本で1/4、中国で1/4を稼ぐという収益構造をしている。
日本の売上高は、2019年12月期が4515億円だった。2023年12月期は2599億円である。「ツバキ(TSUBAKI)」などのパーソナルケア事業の2019年12月期の売上高は554億円だ。事業譲渡の影響を加味しても、十分に戻っていないことになる。
資生堂の売上構成比率はドラッグストアの方が大きいが、百貨店の化粧品売場は戦略的に重要なチャネルの一つだ。しかし、状況は厳しい。資生堂の日本の売上高が戻らない理由の一つに、百貨店化粧品市況の悪化があるだろう。
百貨店化粧品売上は2018年に550億円を超え、2019年は600億円に近づいたものの、コロナ禍で350億円まで急減した。
結局のところ、メーカーにとってうれしい得意客の大半は、百貨店で買い物をするアジア圏の海外観光客だったのである。しかも、中核にいたのは中国人観光客だ。
2019年12月の中国人観光客は71万人で、全海外観光客の3割を占めていた。それが2023年12月は31万人で全体の1割にまで縮小している。しかも、今の中国人観光客は、爆買いに象徴された強い消費意欲が消滅している。景気の冷え込みが影響しているのだ。
百貨店による手厚いサービスは人気が下火に
いまや日本人の8割はドラッグストアで化粧品を購入している。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューションは、全国18~69歳を対象として化粧品についての調査を行っている(「化粧品購入行動に関する調査結果」)。それによると、2022年にドラッグストアで化粧品を購入する人の割合は83.9%。3年前もこの比率は変わっていない。
一方、百貨店は4.5ポイント低下して20.7%となった。コロナ禍以降、日本人もデパートの化粧品売場からは遠ざかっているのだ。
Amazonや楽天などのECモールサイトは好調だ。9.1ポイント上昇して33.0%となっている。
百貨店の化粧品販売は、専門のアドバイザーが提案するコンサルティング型の販売方式だ。それが定価でも売れた理由であり、資生堂は販売員の質の向上に力を入れてきた。しかし、現在は棚に陳列するだけのドラッグストアやECモールが主要な販売チャネルとなっている。こうなると、コストパフォーマンスが重視され、従来の提案型のビジネスモデルが通用しない。
資生堂の人員削減は、旧来型の化粧品販売の方法が転換点を迎えたことを物語っている。