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2025年には、65歳の5人にひとりが発症するといわれている認知症。患者数は増加の一途をたどっているが、若年層であっても人ごとではない。現役世代でも発症する認知症は「若年性認知症」と呼ばれ、全国に3万5000人の患者がいるとされている。

『夫がわたしを忘れる日まで』(KADOKAWA)は、ある日若年性認知症と診断された男性・佐藤翔太を、主人公である妻・彩の目線で描いたコミックエッセイ。2020年、SNSに投稿され話題を呼んだ「若年性認知症の父親と私」の作者・吉田いらこによるセミフィクションだ。

本記事では、翔太の症状が進行しするにつれ、夫婦間の溝が深まる様が克明に描かれる。あなたは、大切な人が“別人”になっても、今までと変わらず愛することができるだろうか? 本作の編集に携わった編集者インタビューと共に、本書の一部を抜粋してお届けする。

大切なのは「変わることを
恐れずに向き合う」こと

――本作はSNSでも掲載されていますが、ネット上の反響はいかがでしょうか。

「ただただ辛い」「涙が止まらなかった」「ひとごととは思えない」「自分や家族がこうなったらどうするだろう」など、大きな反響がありました。

特に印象に残っているのは、いま現在家族が認知症で介護をされているかたや、過去に介護をされていたかたの「自分と重ねて読んでしまった」というコメントです。こうした方々がこの作品を読み終えた時、少しでもいまの自分を肯定できるようになっていたらいいなと思います。

――本作は「セミフィクション」形式をとられています。ドキュメンタリーやフィクションと比較して、セミフィクションならではの特徴はありますか?

作者の実体験や身の回りに起きた出来事、実際に起きた事件などのドキュメンタリー(ノンフィクション)の要素と、起承転結をつくるフィクションの要素を組み合わせることで、読者が現実に起きていることだと錯覚するほどリアルなストーリーを作れる点だと思います。

そこにコミックエッセイの強みである、シンプルな絵柄とコマ割りを用いることで、主人公への共感や親近感が生まれ、ストーリーに奥行きを持たせることができます。

――団塊の世代の高齢化に伴い、家族の認知症発症や介護などが、多くの読者にとってこれからますます“自分ごと”となっていきます。その際、どのように向き合うべきだと考えますか?

人によって事情はさまざまですし、こうあるべきと答えるのは難しいのですが…。本作に沿って答えるとしたら、「変わることを恐れず向き合う」ことだと思います。

作中で、大好きだった夫が変わっていくことを受け入れられない彩は、ある出来事をきっかけに再び夫と向き合うことを決めます。それは過去との決別を意味しますが、同時に前向きな一歩でもあります。

現状を変えることができないなら、自分が変わるしかありません。簡単なことではありませんが、自分自身が変わることを恐れなければ、きっとどんな現実も受け止めることができ、前に進めるのではないかなと。それが本作のテーマに対する、吉田(いらこ)さんの答えでもあると思っています。


取材・文/結城紫雄

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