女性人気もある堅調なコンバース

一方で1908年に創業した歴史あるスポーツシューズのメーカーのひとつである「コンバース」は、さらに独自の道を歩んでいます。その代表作が1917年に誕生したオールスターです。当時のスタープレイヤーだったチャールズ・H・テイラーの名前をアンクルパッチに冠した世界最初のバスケットボールシューズのシグネチャーモデルにして、ブランドを代表する定番モデルとして親しまれています。

オールスターが100年以上のロングセラーを記録している理由が、キャンバス地のアッパーにローテクのソールを採用したシンプルさのため安価とあって、街履き用として愛されていること。50年代以降にアイビーリーガー*たちがキャンパス内や街中でも履くようになったことを皮切りに、70年代以降はパンクをはじめとした音楽シーンでも愛された、いわば街履き用のスポーツシューズの元祖とも言える存在なのです。

また、女性にスニーカーカルチャーを根付かせるのは至難の業ですが、コンバースの価格帯はマス受けする1万円以内のモデルが多いこともあって、女性の愛用者が多いのも特徴です。実際に店舗前を歩く女性のスニーカーを調べた時は、オールスターの比率が目立っていました。ただし、これは逆に言えば今のスニーカーブームとは違う層から親しまれているブランド、とも言えるでしょう。

「コンバース」も新たなブランドバリューを創造するためにUSA生産のモデルを立ち上げたほか、2008年に日本企画のハイエンドラインである「コンバースアディクト」を立ち上げたり、2014年に過去のアーカイブをもとにした「タイムライン」を立ち上げたりと挑戦を続けています。

しかしスポット的にリリースされる「コンバースアディクト」のゴアテックス*搭載モデルやワンスターJなどは時折二次流通市場で人気が出るものの、今ひとつハイプできていませんでした。その理由のひとつとしてハイプスニーカーファンの多くはストリート系のスタイリングであるのに対し、オールスターを履く人たちの多くは古着やアメリカンカジュアルを好む点が挙げられます。

こう言うとブームの波に乗り遅れたブランドのように聞こえるかもしれませんが、言い換えるとハイプスニーカーブームが終わっても「コンバース」の業績は変わることなく、堅調を維持し続けています。ちなみに、日本で売られているコンバース製品はアメリカのものとは別物です。現在、アメリカの「コンバース」は「ナイキ」の傘下となっています。

なぜ、弱小メーカーだった「ナイキ」がスニーカー市場のシェアの大半を獲得できたのか?「エアジョーダン」などのプロモーション戦略に通底する“勝利の方程式”とは_6
CONVERSE CHUCK TAYLOR CANVAS HI NATURAL
なぜ、弱小メーカーだった「ナイキ」がスニーカー市場のシェアの大半を獲得できたのか?「エアジョーダン」などのプロモーション戦略に通底する“勝利の方程式”とは_7
CONVERSE CANVAS ALL STAR J HI
なぜ、弱小メーカーだった「ナイキ」がスニーカー市場のシェアの大半を獲得できたのか?「エアジョーダン」などのプロモーション戦略に通底する“勝利の方程式”とは_8
CONVERSE × NEXUS7 ONE STAR LOAFER BLACK
すべての画像を見る

*マジック・ジョンソン
80年代初頭からロサンゼルス・レイカーズで活躍し、NBAブームを牽引したプロバスケットボール選手。96年にNBA史上最高の50人の選手に選出。

*シャキール・オニール
身長2.1m、体重147㎏の巨漢を活かし、センターとして活躍したNBA選手。シャックの愛称で知られ、ファイナルMVPを3年連続で受賞した。

*『SLAMDUNK』
90年から井上雄彦が『週刊少年ジャンプ』で連載を開始し、全世界での累計発行部数は1億7000万部を突破している人気漫画。

*デニス・ロッドマン
86年にプロ入りし、ラフプレーや奇抜な髪型からバッドボーイズと呼ばれたNBA選手。

*サッチャー政権
1979年~90年にわたって保守党のマーガレット・サッチャーが英国首相を務めた期間。公共・福祉事業・社会保障の削減と民営化の推進をおこなった。

*スティーブ・ジョブズ
アップルの共同創業者として知られるカリスマ経営者。『イッセイミヤケ』のタートルネックセーターと『ニューバランス』の991を常に着用していた。

*アイビーリーガー
アメリカの東部8大学に通う学生のこと。富裕層の子弟が多く、キャンパスライフで培われた服装術はメンズファッションに大きな影響を与えた。

*ゴアテックス
1971年に開発された、透湿防水素材。アウトドア用品やレインウェアを中心に採用され、1979年に「ダナー」がダナーライトではじめて靴に採用した。


スニーカー写真/書籍『スニーカー学』より
写真/shutterstock

スニーカー学atmos創設者が振り返るシーンの栄枯盛衰
本明秀文
なぜ、弱小メーカーだった「ナイキ」がスニーカー市場のシェアの大半を獲得できたのか?「エアジョーダン」などのプロモーション戦略に通底する“勝利の方程式”とは_9
2024年1月29日(月)発売
1700円(税抜)
192ページ
ISBN:978-4048974806
atmos創設者・本明秀文氏、電撃退任から早1年、『SHOELIFE』に続く2冊目の自著を刊行。「スニーカーブームはなぜ終わったのか?そして、これから起きること」をテーマに、25年以上にわたって原宿から界隈を見てきた本明氏の見解を、忖度なしで一冊にまとめました。ジェフ・ステイプル氏、コルク代表で編集者の佐渡島庸平氏、atmosディレクター小島奉文氏、スニーカーYouTuber CRD氏との対談も収録。“スニーカーブームのからくりは、あらゆる商売に応用できる”
amazon