手軽に贈れるアイテム商品が痛手

業績に異変が生じ始めているのが、ポッキーを販売する江崎グリコだ。

グリコは2019年度1-6月のチョコレートの売上高が232億円、7-12月が248億円だった。上半期の構成比率が48.4%、下期が51.6%である。なお、グリコは2019年に決算月を3月から12月に改めている。この数字は12月期に修正したものを基にしている。

2022年度の売上構成比率は上期が47.4%、下期が52.6%だった。2月が含まれる上期の売上構成比率が下がっている。

この傾向は、明治ホールディングスには見出すことができない。明治の2019年度4-9月のチョコレートの売上高は396億円、10-3月が575億円だった。上期が40.8%、下期が59.2%である。2021年度は上期が41.0%、下期が59.0%だった。2月が含まれる下期の比重はほとんど変わっていない。

今月、明治は同社が運営する「チョコレート大作戦」というXアカウントでミルクチョコレート400枚(20㎏)、リッチストロベリーチョコレート870枚(40㎏)を使って手作りする超巨大アポロのレシピを公開し、X(旧Twitter)で話題となった。

「チョコレート大作戦」のXアカウント(@chocodaisakusen)より
「チョコレート大作戦」のXアカウント(@chocodaisakusen)より

この投稿はネタとして投稿したのは間違いなさそうだが、明治の強みはチョコレート菓子を手作りの材料にできる点にある。明治は、公式ホームページに板チョコなどを使った数多くのレシピを掲載している。

婚活に特化した撮影サービスを提供するアルファブルは、Z世代ほどバレンタインの贈り物として手作り志向が強いことを意識調査(「Z世代の意識調査」)で明らかにしている。その材料を提供できる明治は、時流に乗ったマーケティングが可能なのだ。

アポロやきのこの山も、手作り用の商品を販売している。子供が家族に贈るには最適だ。

義理チョコ文化消滅で縮小するバレンタイン市場…グリコ、明治、チョコレートメーカー各社の対策は?_5
すべての画像を見る

一方、グリコの主力はポッキーだが、アレンジを加える隙がない。かつてポッキーはバレンタインに向けたテレビCMを打っていたが、近年は抑制気味だ。ポッキーは手軽な義理チョコアイテムだった。消費者意識が大きく変化する中で、マーケティングも改めているのだろう。

義理チョコ文化消滅とともに危惧されるのが、ホワイトデーのお返しだ。3月14日にキャンディーやマシュマロやホワイトチョコレートを渡すのが当たり前だったが、その市場も縮小に向かう可能性が高い。

取材・文/不破聡