子どもの4人に1人が性被害にあっている
まずは、子どもの性被害の実態をデータからみていきましょう。
内閣府が2022年に行った若年層(16〜24歳)の性暴力被害の実態に関するオンラインアンケートでは、回答者数6224人のうち、26.4%に相当する1644人が「被害にあった」と回答しています。つまり4人に1人以上がなんらかの性暴力被害にあっていた、というわけです。
このデータでは、性暴力の種類別でも被害にあった割合が示されています。言葉による性暴力被害を受けたと答えた人は17.8%ともっとも高く、次に身体接触を伴う性暴力被害が12.4%、インターネットやスマホなどの情報ツールを用いた性暴力被害が9.7%と続きます。性交を伴う性暴力被害は4.1%となっています。
また、性交を伴う性暴力被害の特徴としては、社会的立場が上位の者による加害が多いことが挙げられます。加害者として学校の関係者(教職員、先輩、同級生など)、交際相手(元交際相手も含む)やインターネット上で知り合った人を挙げるケースが多くなりました。
被害届を出したのはわずか14%
警察庁が発表する「犯罪統計*1」によれば、2022年に性加害が事件化し、加害者が逮捕・起訴された「強制性交等罪の認知件数」は1655件でした。そのうち被害者が20代以下のケースが8割以上、10代以下に限っても4割以上を占めていることが明らかになっています。さらに子どもが被害者となる強制性交等罪の認知件数は増加傾向で、0〜12歳に関しては、2018年に比べると1.4倍以上にも増えているそうです。
性犯罪は暗数が多い犯罪です。暗数とは、統計に表れている数字と、実際の数字との差のことです。法務省「第5回犯罪被害実態(暗数)調査*2」(2019年)によると、過去5年間の性的事件において警察に被害届を出した人はわずか14.3%でした。つまり8割強の人が性被害を認識していながら、自主的かそうでないかはわかりませんが、被害届を出さずにいるということです。被害届が出されない限り、統計上は被害があったとはカウントされないのです。
前述の「犯罪統計」によると、2022年の0〜12歳の子どもの強制性交等の認知件数は216人、強制わいせつは769人で合わせて985人ですが、これもあくまでも氷山の一角と考えるのが妥当だと思われます。
子どもへの性加害においては、加害者が巧妙にグルーミングを行い、「ふたりだけの秘密だよ」などと被害者に口止めをすることは、これまで述べてきたとおりです。また、子どもは自分が何をされたのかを正確に理解できないことも多く、親など周囲の大人に被害を訴えたり、しかるべき機関につながるまでに時間がかかるケースがとても多いからです。