枯死した木の根元には日本一ヤバい猛毒キノコ

そして、ナラ枯れに関連するもうひとつの大問題についてです。枯死した木の根元を見ると、気色の悪いクリーチャーのような外見の、赤いキノコがチョロチョロと生えています。一見して明らかにヤバそうなので、さすがに取って食おうという気など起こりませんが、これが想像以上の恐ろしさ。

ゾンビ化する大木と殺人キノコが蔓延…山暮らしライターが見つけた、富士の麓で静かに広がる異常事態の正体_3

燃える炎のような形から、カエンタケ(火炎茸、火焔茸)と名付けられているそのキノコは、日本一とも噂される猛毒を有しているのです。コイツは数ある毒キノコの中で唯一、汁に触れただけで皮膚がただれてしまうそうです。致死量は3ミリグラム、つまりティースプーン半分ほどの量です。誤って食した場合は直後から唇がただれ、大きな口内炎ができ、食後10分から発熱・悪寒・嘔吐・下痢・腹痛・目眩・手足のしびれ・言語障害・血圧低下などの激烈な症状が発生。その後は高熱・消化器不全・肝不全・腎不全・呼吸器不全・脱皮・脱毛・びらん、そして小脳萎縮による運動障害など脳神経症状が起こり、死に至るそうです。

役満かよ。……恐ろしや(本日二回目)。

そんな殺人キノコなんて、全然知らなかったという方もいるでしょう。それもそのはず、カエンタケはやや珍しいキノコで、見つかると新聞の地域版に載って騒がれるほどの存在なのです。ところがどのようなメカニズムにあるのか文系の僕には説明できませんが、ナラ枯れで枯死した樹木の根元に高頻度で発生するので、ナラ枯れの流行とセットで地域に蔓延してしまうのです。

このキノコを「食べてみた!」とやって死んでしまったお調子者のYouTuberがいたというのは都市伝説にすぎないようですが、過去には本当に、酒に浸けて飲み、死に至った人の例もあるとか。我が家の隣の空き地にある2本のナラ枯れ樹木の根本には、この殺人キノコがすでにたくさん生えています。

さすがに取って食おうと思うやつはいないだろうと書きましたが、我が家にはちょっとおバカなワンコが一匹います。いくらダメだダメだと言っても、山の家に着いたら我を忘れて猛ダッシュ。家の境界を超え、隣の空き地の枯葉の上を気持ちよさそうに散策したりしていることがあります。

んもう!! チョー心配!!

触れるのもヤバイから迂闊に抜くことはできないし、胞子が飛ぶシーズンは離れていても目や鼻の粘膜がやられるという情報もありました(信憑性にはやや疑いありですが)。

どうしたものだろうか。保健所に連絡すれば、なんとかしてくれるのかな?

写真・文/佐藤誠二朗

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『山の家のスローバラード 東京⇔山中湖行ったり来たりのデュアルライフ』
佐藤誠二朗 (著)
ゾンビ化する大木と殺人キノコが蔓延…山暮らしライターが見つけた、富士の麓で静かに広がる異常事態の正体_4
2023年11月15日発売
2200円(税込)
264ページ
ISBN:978-4991203923
東京で生まれ育ち、働き、家族をつくってきた筆者は、なぜデュアルライフ(二拠点生活)を始めたのか。東京と山中湖を行き来しながら暮らす日々を軽快に綴ったエッセイ集。コロナ禍を経て、新たな暮らし方を模索する全てのひと必読の書。

著者が山中湖村にある“山の家”を手ごろな価格で手に入れたのは2017年のこと。以来、東京の家との二拠点生活=デュアルライフがはじまる。コロナ禍で「この機会に景色のいいところに住んでみよう!」と思った人も少なくないはず。ここにはそんなデュアルライフのリアルが描かれている。
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