うっかり落として変形→そのまま使用はキケン!

リチウムイオン電池からの発火を避け、モバイルバッテリーやスマートフォンなどを安全に取り扱ううえで注意したいことは複数ありますが、まず覚えておきたいこととして2つのポイントを解説します。

1つ目のポイントは、「強い衝撃を与えない」ことです。

たとえば、「うっかり手から滑らせたモバイルバッテリーが、コンクリートの地面に落ちて変形してしまった」という場合。まだ機能するからといって、そのまま使い続けるのは非常に危険です。

仮に落下したときに、見た目上の変化はなくても、少し時間が経ってから異常を招く可能性があります。最悪の場合、発火などの事故に至る可能性もあるので、製品の処分などを検討しましょう。

《夏場の車内放置は絶対NG!》モバイルバッテリーやスマートフォンの発火トラブル急増中。「絶対やってはいけない行為」とは?_01
落下して変形したモバイルバッテリーは、問題なく使えたとしても処分を検討しよう
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では、なぜこうした現象が起こるのでしょうか。ここで理解しておきたいキーワードは、「ショート(短絡)」です。

そもそも、リチウムイオン電池を内蔵する機器に搭載されているような電気・電子回路では、ドバドバと電気が大量に流れ続けているわけではありません。

こうした電気・電子回路には「抵抗」があるので、電流の量はちょうどよく制限されています。水道でたとえると、水道管のパイプから常にドバドバと水が流れ続けているわけではなく、蛇口を捻ることで、必要な水量が出るように調整しています。

《夏場の車内放置は絶対NG!》モバイルバッテリーやスマートフォンの発火トラブル急増中。「絶対やってはいけない行為」とは?_01
「ショート(短絡)」の大まかなイメージ(図は筆者作成)

「ショート(短絡)」という現象を噛み砕いて説明すると、この抵抗がある場所を飛ばして、プラス極とマイナス極がダイレクトに繋がってしまい、電気が大量に流れる状態を指します。

先の水道の例で言うならば、太いパイプに穴が空き、蛇口の存在を無視して、ドバドバと大量の水が噴き出すようなイメージです。これが電子・電気回路で起こると、感電のリスクを引き起こし、火花が発生することもあるので大変危険です。

《夏場の車内放置は絶対NG!》モバイルバッテリーやスマートフォンの発火トラブル急増中。「絶対やってはいけない行為」とは?_01
リチウムイオン電池の内部にあるセパレータの大まかなイメージ(図は筆者作成)

また、コンパクトなリチウムイオン電池の内部は、プラス極とマイナス極が薄いシートの状態で折り畳まれた構造になっています。そして、これらが直接触れないように、間に電気を通さないシート(セパレータ:絶縁体)が挟まれているので、普段は安全に使えています。

しかし、外部からの衝撃や圧力などによって機器が変形したとき、この電気を通さないシートに穴が開くことがあります。すると、プラス極とマイナス極がダイレクトに繋がってしまいショートが発生。これが「熱暴走」や「発煙/発火」といった現象につながります。

そのため、モバイルバッテリーが落下して変形した場合、異常が見られないからといって使い続けるのは非常に危険なのです。