大規模な日本ロケを敢行
昔の作品でも見たことがなければ新作映画!
一周まわって新しく映った作品の数々をピックアップする「桂枝之進のクラシック映画噺」、今回は『ブラック・レイン』(1989)をご紹介。
レストランで起きた殺人事件の犯人・佐藤(松田優作)を逮捕したニューヨーク市警のニック(マイケル・ダグラス)とチャーリー(アンディ・ガルシア)。
佐藤を日本へ護送するものの、空港に着いた途端、ニセの警官に騙され逃げられてしまう。
捜査のため足を踏み入れた大阪で、堅物の松本警部補(高倉健)ら日本の警官とぶつかり合いながらも核心に迫り捜査を進めてゆく……。
当時のアメリカ映画としては珍しい、大規模な日本ロケが行われたことでも有名な本作。
監督のリドリー・スコットは当初、新宿・歌舞伎町を中心とした東京ロケを望んでいたそうだが、東京の街並みが想定より近代化されていて作品のイメージにそぐわなかったこと、また、警視庁や東京都の撮影協力が得られなかったことから、最終的に大阪や神戸でのロケが行われることとなった。
しかしながら関西も当時はフィルム・コミッションが存在しておらず、現場は混乱を極めたという。
関西出身の筆者にとってなじみ深い、道頓堀やサカエマチ商店街、神戸・元町などが舞台となっているのだが、見慣れている街並みが、バブル期真っ只中の空気とフィルムの質感によって、どこかファンタジックに映った。
阪急百貨店のステンドグラスやそごうのネオンなど、今では見ることの叶わない風景も作中に数多く収まっていて興味深い。
美術が入っているとはいえ元気な頃の日本がアーカイブされているという点も、この映画の歴史的価値と言えるだろう。