“ダメ妻”コンテンツはなぜ少ない?
――本作において、いくたさんが特にこだわって書いた部分について教えてください。
本作はエッセイではないので、あまり本当にあった話のようにしないほうがいいと思い、絵に描いたような古い体質の家庭を舞台にしました。モラハラ気味の夫や、意地悪な姑など、テンプレートのような厳しい嫁ぎ先ですよね。なな子の行動に賛否両論あってほしかったので、彼女はとことん可哀そうな人として描いています。
――そんな辛い環境の中で、娘の一花ちゃんはなな子にとって大きな心の支えになっていましたよね。
小学生であそこまでしっかりしている子ってなかなかいないですけどね(笑)。一花ちゃんはなな子にとって守るべき娘でありながら、なりたかった自分の姿でもあると思うんです。なな子にも頑張る理由がなくちゃいけないと思い、一花ちゃんをなな子の軸のような存在として描きました。
――本作にはタイプの違うダメ夫が2人登場しますが、いくたさんの考える、ダメ夫との適切な向き合い方について教えてください。
暴力を振るってくるとか、この人とはもう一緒に生きていきたくないとか、そういう相手ならすぐに離れて再スタートを切ったほうがお互いのためだと思うんです。「子どもがいるから」という話をよく聞くけれど、そんな相手と一緒に居続けることが本当に子どものためになるのかもわからないわけだし。
ただ、そこまで状況がこじれているわけではなく、お互いにやり直したいという気持ちがあるのであれば、まずは自分にも至らない点があったんじゃないかと考えてみたほうがいいかもしれませんね。
人間、誰しも自分が悪いとは思いたくないじゃないですか。しかも、“ダメ夫”は色んな媒体で取り上げられているけれど、“ダメ妻”に関するコンテンツって全然ないんですよね。きっと出した瞬間に叩かれてしまうから。私としては、相手側のカテゴリだけじゃなく、自分側のダメな行動についてももっと知りたいのですが。
――いくたさんは、どのように自分のダメな部分と向き合われたのですか?
私は過去に『夫にキレる私をとめられない』というコミックエッセイを描いたことがあって。やっぱり自分の怒りを最もぶつけやすい相手が夫で、それは夫に対する甘えでもあるんですよね。しんどい思いをしながらでも色々と考えて、コミックエッセイとして形にできたおかげで気付きを得られた部分は大きいと思います。