「何も考えず楽しくなれるものを提供したいという
気持ちがより強くなりました」
Q.3 映画版を観たことで、あらためて『おとななじみ』という作品について思うこと、思い出すことなどをお教えください。
映画『おとななじみ』を観た後、すごく楽しくて幸せな気持ちでいっぱいになりました。改めて私は漫画を読んだ読者さんにこういう気持ちになって欲しくて描いているんだなぁと思いましたし、そのまま映画にしていただいたことに感謝しています。
『おとななじみ』を描いている途中でコロナ禍になり、自分が生きる糧としているもの全部がなくなってしまいました。
世の中の人みんなが同じ状況にある中で、エンターテインメントを作る人間としてただ何も考えず楽しくなれるものを提供したいという気持ちがより強くなりました。なったのですが、いかんせん自分自身も元気がなくなってしまったもので、笑いを作るのにいつも以上に努力が必要でした。
なので『おとななじみ』を描いている間、特に後半はしんどすぎて死んだ顔でうんこを描いたりしていました。よく頑張った自分を褒めてあげたいですし、うんこに感謝しています。
Q.4 原作のハルと楓が「幼なじみじゃなくなった」シーンでは、2人とも過剰に泣くことなく、それまでの延長線上で幸せになったように見えてとても素敵でした。こうした恋愛のクライマックス(に限らず恋愛全般でも)を描くうえで、特に意識していることがあればお教えください。
ありがとうございます!
恋愛中心の少女漫画を描くにあたっては、あまりつらいことや悲しいことがないよう、出来るだけハッピーな気持ちだけ残るように意識しています。
現実世界が既にしんどいのに漫画でもしんどい思いをしないでほしい! 頭は使わないでほしい! 今だけバカになってほしい!と思って描いています。
Q.5 以前、「私は漫画を描くときに会話のテンポを一番大事にしたいと思っている」とおっしゃっていましたが、拝読していてもやはり登場人物たちの会話に笑ってしまいます。
『おとななじみ』では蝶子さんのお店で美桜→ハル→蝶子の流れで「うんこ」の話をしていたところのテンポが気持ちよく、爆笑しました。ご自身で特に気に入っている会話のシーンがあればお教えください。
ありがとうございます!
逆に私の個性は会話のテンポしかないと思っているので、テンポを失うことは漫画家としての死を意味します。
考えれば考えるほどテンポを失うので、漫画を作るうえで先のストーリー展開や方向を決めてしまうとすべてがダメになってしまいます。ただノリと勢いで思いついた会話を書き綴っているので、自分でも先のことはわかりません。偶然出てきた会話に合わせて展開が決まります。
なのですごく考えたセリフなどはほとんどなく、何も覚えてないんです。書いたセリフを……何も……覚えてないんです……。なんかすごいうんことか言っていた気はします……。なんでもうんこで解決しようとする……ひどい…。うんこに感謝しています。