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――まず最初にBASIS House Projectがどういったプロジェクトなのかを教えてください。

古民家をリノベーションし、美深町でのアウトドアやDIYを楽しむための拠点として活用するプロジェクトです。都市部に住むアウトドア好きをメインターゲットに、ワーケーションなどの長期滞在を想定しています。
観光協会のぼくと、カヌーのガイドをやってる戸谷くんの2人が中心になって2021年にスタートしました。

東京から北海道の美深町にUターンした観光協会事務局長が語る、田舎暮らしの難しさと面白さ_1
観光協会の小栗さん(左)とカヌーガイドの戸谷さん(右)
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――このプロジェクトを始めたきっかけは何ですか?

宿泊拠点を増やしたいというのが一番の動機ですね。
美深ってアウトドアのフィールドとして非常に魅力的で、観光のプログラムもアウトドア中心につくってるんですが、如何せんアクセスが悪い場所なので、日帰りというよりは宿泊ありきで遊びに来られる方が多いんです。
だけどこのあたりにアウトドアと親和性の高い宿泊施設があまりなくて……。
キャンプ場はあるんですけど、街中で泊まろうと思うと昔ながらの旅館や民泊しかないんですよ。旅館も観光客向けというより地域の工事関係者向けの場所がほとんどで。
なのでアウトドア用の滞在施設を自分たちでつくりたい、ということはずっと考えていました。

東京から北海道の美深町にUターンした観光協会事務局長が語る、田舎暮らしの難しさと面白さ_2

雪国の空き家問題は深刻

もう一つは空き家の活用です。
空き家の増加自体は田舎ならどこでも共通の問題としてあると思うんですけど、北海道のように雪が降る地域だとより深刻なんですよね。
雪のない地域なら何年か放置したって大丈夫だけど、雪があると1, 2年放っておくだけで建物が潰れたり傷んだりしてどうしようもなくなっちゃう。美深にももう使えないような空き家がいっぱいあって……。
この施設も古民家をリノベーションしたものですけど、たまたま前の持ち主の方が手放したいってタイミングで運良く引き取れたからこそできたもので。人が住まなくなって一冬越したあとだと難しかったでしょうね。
宿泊施設の数はどんどん増やしていく計画なんですが、なかなかタイミングよく引き取れて、条件の良い物件がなくて苦労してます。不動産屋もないから情報を集めるのも大変だし。

――不動産屋がないんですか?

ないですよ、美深にはない。ほとんどが個人売買です。
だから誰が持ち主なのかよくわからない土地や建物なんかも多くて、そうすると明らかに人が住んでいなくて廃墟みたいになっても誰も手が出せなくて困っちゃうんですよね。更地にすることもできない。
そうならないようにちゃんと解体してから手放すとなると、今度は解体費が何百万とかかってしまう。このプロジェクトが上手いこと受け皿になれたらと思っています。

この建物は1棟目ということでほぼ全部ぼくらがリノベーションしましたけど、2棟目以降はここに滞在してくれたお客さんにもリノベーション作業をしてもらうつもりです。

――私もペンキ塗りを少しだけやらせてもらいましたけど、楽しかったです。

楽しいですよね。そうやってDIYを楽しんでもらって、建物の一部を自分がつくったとなれば愛着も湧いて、また来てもらうきっかけになるかなと。
繰り返し訪れてもらうことで美深を気に入ってくれる人も出てくると思うので、そこから移住に結び付けられたらと考えています。

東京から北海道の美深町にUターンした観光協会事務局長が語る、田舎暮らしの難しさと面白さ_3
リノベーション体験の様子

――移住まで見据えたプロジェクトなんですね。

このプロジェクトに限らず、うちの観光事業は基本的に「移住者を増やすための観光」という考えでやっています。
先ほど美深には宿泊施設が少ないという話をしましたけど、宿泊に限らず観光事業者がすごく少ないんですよね。アウトドアガイドも3件しかない。
アウトドアのフィールドも初心者というよりは中級・上級者向けの場所が多いですし、釧路湿原のように年間何百万人みたいな受け入れはできません。

だから観光事業そのものを頑張るというよりは、観光を通して街づくりをする、移住者を増やす、というのを目標にしてるんです。